●琥珀捕り
なんといってよいのか、小説なのかはたまた究極の語りなのか、キアラン・カーソンの「琥珀捕り」は、琥珀やオランダや人魚やその他いろいろなものへの薀蓄と物語の一大交響楽である。拡散していく語り(=騙り)のなかに、陶酔するのがよかろう。Aの副題から始まりZの副題で終わるこの小説はしかし終わりがあるわけではなく、細やかにつながる物語とイメージの中で新しい物語を読者の中で産み増やしていくに違いない。
さてこの迷路のような物語をただただ酔いしれるのも良いけれど、より味わうには、フェルメールの絵画集、ローマ・ギリシア神話の本などをちょっと横に積んで、暑い昼下がりに京都の和菓子(この和菓子に関しては後で触れることとする)など準備して、思うがままに1章づつ、読み終われば思うがままに読み返すのが良い。私としては4.5、他の好事家にはぜひ押し付けたいと思うのである。物語の迷宮に酔いしれよ。