« 宇治 | メイン | 金沢21世紀現代美術館など »

August 02, 2006

●シャルビューク夫人の肖像

book-Ford-01.jpgジェフリー・フォードは「白い果実」を積んであるんですが、三部作ということでできればそろってから読みたいのだがいつになることやら。さて、そうして待っている間に「シャルビューク夫人の肖像」というのがでてしまいましたので、こちらから読んでみました。ランダムハウス講談社なんてのがあるんだね。

さて、幻想文学かというとそういう感じもむんむんで、途中の語り具合や広がりはけっこうよかったんだけど、最後はちょっとありきたりかなあ、ということで星3つ。ちょっと厳しいかな。でも幻想文学を期待するとちょっとつらいかもしれないので、普通の海外小説として読むほうがよいと思う。幻想文学的な視点では、最後は向こう側に着地するかこちら側に着地するかというと、こちら側に着地しちゃったので、私の好みからはちとはずれるかも。私個人的にはあちら側に着地するか、そもそも着地しないものが望まれるのだ。

「白い果実」を読んでいないので比較ができないんだけど、語りや設定、なかでくりだされる挿話はすんごく好きで、ああこのまま壊れていくと良いのに・・・と思ったが、さすがにそうはならず、ずんずん普通の方向にいっちゃった。途中では少し「アラビアン・ナイトメア」を思わせるような部分もあり美しかったんだけどなあ。まあ普通の海外小説として読むとよくできていておもしろいのかもしれないが、当方幻想に惹かれすぎておりまして。

で、小物の出し方や語り口はすんごくうまいと思う。キャロルなんかよりずっとよいと思ったんだけど、最後まで続くわけではなかった。それは最初にも書いたとおり、着地の仕方の問題で、ああ着地なんかしなければ傑作になったのになあとちょっと残念。最後のほうのワトキンの説明なんかまったくいらないんだけどなあ。でもそのあたりがないと納まらない人も多いようなので微妙だな。個人的にはせっかく広がった幻想の翼をたたむことなく悪夢の世界で終わったほうがよい気がする。

以下ちょっとだけふれるかも

だいたいこのオチは多すぎるので、よほどうまくやらないと、ああまたか、なんだけどその中ではまだよいほうかもしれない。だけど最後のほうで話しが出る血の涙を流したのはみなルシエルだったというのはちょっと唐突過ぎるかなあ。もう少し死んだ女性たちに感情移入できていないとこの言葉は難しいのではないだろうか。またやはり一番最後は血の涙で終わるべきではないのだろうか。。。つうかこちら側へ着地しなくて良いよ。

コメントする