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October 09, 2006

●邪魅の雫

book-Kuogoku-02.jpg京極夏彦の京極堂シリーズ本編が久々に登場です。ちょうど3年前にこのBlogを書き始めた頃に、ひとつ前の「陰摩羅鬼の瑕」を読んだらしい。こういうのは書いていると記録に残ってよいね。

さて、前回の「陰摩羅鬼の瑕」は凝縮したというか、やはり物足りない感じだったけど、今回の「邪魅の雫」はなかなか事件が拡散していてよろしい。やはりこうでなくては、登場人物の多さに対応できないだろうと思う。相変わらず「何が起こっているのか」型ではあるが、うまくはまっているし、中で「書評なんて何の意味もない」と言い切ってくれているので、心地よく好きに書くことができる。で、今回は好みのタイプなので星4つ。また、今回は旧作品の簡単な関係や解説が別冊でついており、これはすばらしいと思う。

今回の「邪魅の雫」ですが、ここまでくるとやはりパターン化というか、プロットの構成は類型化している部分もある。それをうまく隠しているのは、関係者とその人間模様の広がりで補っている感がある。私見では「魍魎の匣」や「狂骨の夢」に近い気がする。特に「狂骨」かな?で、それが弱点かというとそうでもないのは、この小説の肉付きの部分が豊富なので骨格だけでみる事はできないからだろう。逆にこのシリーズの場合、実は事件のシステムは論理的にというか観念的にきれいに構成されているので、その部分を隠してしまう過剰な部分が働かないとちょっと問題になる。前作はその感が強いと思う。

で、最近は京極堂や榎木津、木場修はなんつうか神の域にいっちまって、一般人であるバカオロカ益田、コケシ青木が活躍するのがおもしろい。これも前作の榎木津の使い方に困った部分をうまく補っているんじゃないかな。このあたりはそうしないと事件が瞬間に終わってしまいかねないので、仕方ないですわなあ。でも、そのほうが彼らの動き(見えない部分での)にいろいろ想像できてよい気もする。まあファンとしては表に出て活躍してくれないと面白くないだろうけど。

また最初に書いたけど、今回、小冊子の「京極夏彦全作品解説書」がついているのはホームランですね。最初の頃は半年毎に出ていたのでよかったけど、最近は何年か間に入るので、さすがに人間関係は忘れます(朱雀君のシリーズもそうだ)。で、まったく忘れてもよいものならよいが、やはり関係しているわけで、せめて人名と関係や事件の前後関係がわからないとつらい。そういう意味ではこの小冊子が無料配布されたり、本編といっしょに渡されたりするのはとてもよかった。で、Amazonには「邪魅の雫 大磯・平塚地域限定特装版」がでるとか。うーん、商売っぽい。

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