« SMD150回定期演奏会 | メイン | ノルディック室内管弦楽団 »

June 02, 2007

●キングとジョーカー

book-Dickinson-01.jpgむかしむかしサンリオ文庫というのがあって、好事家しか選ばないようなSFや小説が翻訳されたのであるが、一般の人にはなんのことやらわからなかったみたいし、訳がひどいという話もあったりで、絶版。その後一部の古本屋では一部の作家の作品が高額で売られていたものである。バロウズの作品などは軽く1万円以上だったのではないだろうか?編集者が勝手な好みで選んだのか、SFに限らず現代文学でもバースの「フローティング・オペラ」やピンチョンの「競売ナンバー49の叫び」やマルケスの「エレンディラ」、カルペンティエールの「バロック協奏曲」など現代文学でよだれがでるもの、ディックやバロウズ、ディッシュなどその後カルト人気のSF群など再刊されたもの多数である。訳も実は原文がひどい(つうかやりすぎていたりする)のもあったりしたわけで、実は20年以上先を行っていたのかもしれない。

そのサンリオ文庫で出版され、その絶版後趙高値で取引されていたピーター・ディキンスンの「キングとジョーカー」が扶桑社から文庫で復刊されました。うれしすぎる。

「現実とは異なる家系をたどった英国王室。王女ルイーズは、いつもと同じ朝食の席で、父王の秘密に突然気づいてしまう。しかしその朝、とんでもない騒動が持ちあがった。。。」 この架空英国王室の書きっぷりが面白すぎる。また13歳の王女ルイーズのしっかりぶりが楽しい。。。というか、推理小説の部分よりかルイーズの成長小説という意味づけも大きいね。また出てくる人々がすべて面白いんだけど、特に乳母ダーディ の位置づけもすごい。老人小説でもあったのだな。そのいろいろな要素が絶妙のバランスで展開しているのであった。

こういうのは推理小説的な部分だけで評価すると弱いかもしれないけど、架空歴史SF小説+ビルドゥング小説+老人小説+王室内部のスラップスティック小説+英国民と王室への皮肉小説であるからよいのだ。一粒で3度はおいしいぞ。日本では絶対無理っぽいなあ。。。

コメント

こんにちは。
確かに推理小説的部分は微妙でしたが、
全体の雰囲気、ルイーズやダーディのキャラで
楽しく読める一作でした。
じつはもっと重厚なものを想像していたので、
ちょっと戸惑いました・・・。

ごぶさたです。

そう、結構軽いですね。キングは切れ者なんだかどうだか。ルイーズはできすぎですね。

コメントする