November 30, 2005

●歌う砂―グラント警部最後の事件

book-Tey-01.jpgジョゼフィン・テイというと「時の娘」をずいぶん昔に読んでもちろん面白かったんだけど、あんまりグラント警部に思い入れもなければ、文章や情景の描写にも気づかなかった。。。というのはほとんど病室の中のわけで。でも看護婦とかの人物の使い分けはうまかったような印象がある。で、論創社の「歌う砂―グラント警部最後の事件」を読んだらこれがおもしろくておもしろくてたまらん。もっともパズラーではなく、前半部分はもう事件的にはなんにもないままにグラント警部再生物語なんだけど、それがおもしろい。

乱歩が読みたがったということなんだけど、あんまりトリックや事件の不思議さで追っかける本ではないだけに、読んでそう思ったか知りたいなあ。というわけで星4つ(4.5でも良いけど推理小説としては物足りない人がいるかもしれないので)。

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November 26, 2005

●大聖堂は大騒ぎ

book-Crispin-02.jpg「愛は血を流して横たわる」が面白かったので、続けてエドマンド・クリスピンの「大聖堂は大騒ぎ」を読んだ。おもしろかった。もっとも好き嫌いは別れるかもしれません。推理小説としての完成度は・・・壊れているかもしれないし、トリックは・・・これも壊れているかもしれん。でもジャーヴァス・フェン教授が活躍、というか引っ掻き回しているだけのようにもみえてしまうのだが、がんばってくれればそれでいいのだ。星4つといきたいところだが、その次に読んだジョゼンフィン・テイの「歌う砂」のほうがうまさに感心したので、星3.5で。

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November 24, 2005

●ハウルの動く城

DVD-Howl.jpgDVDが出ていたので思わず買ってしまった私は現実逃避気味?Webサイトでは賛否両論なんですが、私的には良かったです。声も別に気にならなかったし、逆にソフィー落ち着いていてよいかなとか。ストーリーが判りにくいとかいう意見もあるみたいだけど、別にあれ以上くどくどやられたら逆に興ざめでしょう。「ラピュタ」以来で好きかも。

映画だなあと思ったのは、荒地の魔女の「きれいな火だねえ」とか、ソフィーが雨の中本気で声をあげて泣くシーンとか、城ががたごとと動く(戦闘機などの滑らかな動きとは対極にある)シーンなどがやはり良くて、実はとても重要で、それに比べれば背景の説明なんていらないんだよなあ。そういうのを少し切れば説明的なことも入れられるんだろうけど、でもそれじゃ全体としてぶち壊しのような気もするし。それに比べれば、別にソフィーの視点から見れば、なぜ戦争しているか、どう戦争しているかなんてわからないんだし、その後どうなったかなんて結局見る人が自由に妄想すればよいのだと思う。こういうところは「奇談」とえらい違いで、そのあたりを「奇談」でもちゃんとやってほしいと思った。

またカブが隣の国の王子様だったなんてのは物語のパターンを使った冗談なんだから、そこをまじめに突っ込むのはかわいそう、と言うよりも突っ込む人がかわいそうだなと思う。

November 19, 2005

●奇談

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奇談」を初日から見てきました。空いてるしすぐ終わりそうだなあ。話は「生命の木」に少し「天神さま」を混ぜた感じですが、どうだろう。

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November 18, 2005

●どんがらがん

book-Davidson-01.jpgアヴラム・デイヴィッドスンなんて知りませんなー、殊能将之氏推奨かあ、と思って読み始めたが、解説を読んでいて思い出した。そうだ、クイーンの代筆やってたじゃん、しかも私があんまり好きではない「第八の日」に途中で放り投げた「三角形の第四辺」。それじゃだめだめかなというと「どんがらがん」は少し面白かった。で、わかったのはデイヴィッドスンはプロットというかアイディアへの肉付けはできるが、登場人物を肉付けしていく筆力ではないということだ。クイーンのものは梗概以上におもしろくなかったのは、やはり自分のプロットでひねくる文体なんだよなあ。登場人物を肉付けしていく文体じゃないのね。

タイトル作の「どんがらがん」が面白い。これがないと星3つなんだけど、「どんがらがん」は星4つ。で、本としては星3.5ということで。

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November 15, 2005

●宮沢吾朗×2冊

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名人戦が終わりました。小林覚九段残念!張栩名人最後はがんばりましたねえ。

さて、最近の私的序列では、1に文学、2に音楽、その次がゲームで、ゲームの中に入るかもしれないとはいえ囲碁は4番目である。4番目の趣味ともなると相当時間が限られていて、囲碁界のタイトルの情報を追うのが目いっぱいで、自分が強くなるなんておこがましい話でもあるんだけど、まあそのうち暇を作って日本棋院や碁会所に出没するのが夢である。日本棋院のネットにもはいろうかなーと思っているのだが、おもしろそうな対局のライブは普通の日なので、サラリーマンにはつらいのう。。。ここでは宮沢吾朗九段の新刊2冊を購入したのでご紹介。

ちなみに宮沢吾朗九段は、さかなくんのお父さんです。子育ても常識破壊だったってことでしょうか。よいことだ。

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November 13, 2005

●暗闇神事 猿神の舞い

book-Suzaku-03.jpg藤木稟の朱雀十五シリーズの新作が出ていたので読みました。「暗闇神事 猿神の舞い」でのうんちくは歌舞伎。歌舞伎の一門である猿田屋に伝わる「ミハシラツキ」の伝説と浅草連続猟奇殺人事件の話です。前作の「夢魔の棲まう処」はいまひとつぴんとこなかったし、「殉教者は月に舞う」はあまりにもひどかったけど、今回はまずおもしろかった。

やはり歌舞伎とか猿楽とかでうまく埋められているからで、その饒舌な感じがないとすかすかになっちゃうんだなーと思った。朱雀十五が出てくるバランスも良いような気がする。出過ぎることも難しいし、あまり出ないとおもしろくないし、、、難しいですなあ。人魚もでてきて某巨大作品と似ているような。。。でもこちらのほうが断然面白いと思う。柏木くんはこのくらいでうろうろしているのがよく、前回作だとちょっと壊れすぎ。

ただ、トリックは許すにしても、これだと犯人が猿田屋内の人間になってしまうので、心理的にはちょっと疑問だ。あと本のデザインはあんまり気に入らないぞ。

November 11, 2005

●蒼天航路

いやあ連載終わってしまいましたねえ。11年間ご苦労様でございました。おかげでやめようやめようと思いながら、けっこうモーニング買っちゃいましたよ。

私が好きなのはやはり蒼天航路での「じじい曹操」でございまして、中年以降、赤壁以降のほうが味があるなあと思うのです。今年の初めは結構三国無双4とかやってたんですが、絵も声もアオッチョロイのはやはりイメージが違う。。。もう記念に「じじい軍団による三国無双」作ってくれんかなあと思うことしきり。もう猿になってやります。じじい曹操は別に戦闘できなくてもいいです。徐晃も楽進も張遼も夏候惇も蒼天航路の絵であればジジイ状態がいいです。

November 07, 2005

●アプルビイの事件簿

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マイケル・イネスのものでは大物の「ストップ・プレス」が積まれているんだけど、途中で止まっていた創元推理文庫の短編集「アプルビイの事件簿」をもう一回最初から読み直した。けっこうしっかりした短編集だなと3.5点。ついでに森一訳 勉誠社の「アップルビィ警部の事件簿」も読みました。勉誠社の「アップルビィ警部の事件簿」のほうは訳の問題もあり星3つ。でもイネス・ファンは読むように。

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November 06, 2005

●魔障ヶ岳

book-moroboshi-01.jpg諸星大二郎といえば小学生の頃にまともに連載中に読んだ「妖怪ハンター」や「暗黒神話」が衝撃的で、今でも古代神話が好きなのはその影響を受けているかもしれない。もっとも今読むと、さすがに小学生の頃とは感じ方が違うんで、当時はホラーっぽい感じ方だったんだけど今はやはり幻想譚みたいな感じでしょうか。

で、「稗田礼二郎フィールドノート」といったほうが良いのだが、一般的には「妖怪ハンター」と言う名前で通っているシリーズの最新刊が出ていたので購入。「魔障ヶ岳」はメフィストに連載されていたらしい。出始めた頃はメフィストも買っていたけど、もう買ってないからねー。連載していたこと自体知らなかった。ついでに映画でシリーズ最高傑作である「生命の木」が奇談というタイトルで映画化され、11月中旬には公開されるらしい。見に行かなくては。。。なんだけど、けっこう微妙かもしれない。不安半分。

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November 05, 2005

●黄昏語る時

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ベルッティの黄昏シリーズから「黄昏語る時」です。MOTU の「Symphonic Instruments」を購入したので、それで試してみようと思ったのですが悪戦苦闘。。。というのは「Symphonic Instruments」が悪いというより、こんな表現が重要な曲を練習に選んだ自分がだめだめです。またギターなどのトレモロ的な効果もけっこう難しく練習台としてはつらいものがあります。できはあんまり納得もしていないんですが、あんまり持っていてもよくなりそうにないので。

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November 03, 2005

●Anekdoten と The Changelings

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では、プログレ系2枚ほど推薦しておきますわ。このあたりはAmazonでリンク貼れないんですけどねー。

まずひとつは今年2月の ANEKDOTEN の「Waking The Dead,Live In Japan 2005」今年2月のライブの CD でっす。いやあプログレ魂の本流といいますか、あの頃のクリムゾンを髣髴といいますか、これはよいですなあ。ライブ行けばよかったなあとつくづく反省。特に演奏やノイズ的に優秀なものを選んで入れたらしいが2枚組でもよかったのにー。

あと、Xavier Records から購入したのだが、ダークゴシック系で The Changelings がよかった。ちとインドっぽいリズム系も含めてなかなか気持ちがよかです。特に2曲目の Season Of Mist が好きなんだけど、その後、それを超えるヒキがなかったのはちょっと残念。でも全体にネオクラシカル、ゴシック系作品としては良いなーと思います。Changelings はアイルランド民話系の取替え子(妖精が赤ん坊を取り替えちゃうんだね)のこと。