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November 01, 2006

●10ドルだって大金だ

book-JackRitchie-02.jpgジャック・リッチーの「クライム・マシン」が大ヒットですが、晶文社ミステリシリーズはこれで終了。。。で、場所?を替えて河出書房新社でKAWADE MYSTERYとして登場です。ちなみにわたしゃ今年読んだのですが。で、第二弾の「10ドルだって大金だ」もとってもおもしろい。とってもカロリーオフ。短編集なので、ほんの合間に読んでもぐひゃぐひゃ笑えるのである。このちょっとひねくれた感じがたまらんとです。「クライム・マシン」は私の上半期のベストにも入っておりますんで、同じ年に読むのはちょっともったいないか?

大体最初のものからして、人をくったというか読者の予想を見越して反対の落ちをつけるというか、けっこうあぜんとしますね。犯罪的なものも多いんだけど、その落とし度合いとクールさでからっとした感じであります。

ジャック・リッチーって「クライムマシン」がでるまでそんなに知られてもいないと思うけど、面白い作家はいるもんだねー。 しかもこれだけあるとけっこうパターン化されて飽きてくるんだけど、これはけっこう飽きずに読めます。読者の思考を考えてひねるのがうまいと思う。前作にあったカーデュラものも1篇入っているけど、今回はそれよりも迷探偵ヘンリー・ターンバックル部長刑事シリーズが好きになった。ヘンリーおもしろすぎる。まるでコリン・デクスターのモース主任警部を短編でやっているようだ。もっともヘンリー・ターンバックル部長刑事はモース主任警部より人がよさそうだけど妄想型探偵の傑作です。

KAWADEの新シリーズではマイケル・イネスの「アララトのアップルビイ」やグラディス・ミッチェルのものが予定に入っていて小躍りしています。特に次巻はイネスのようなので、これはもう出ます、出ますよ。。。マイケル・イネス、グラディス・ミッチェル、ナイオ・マーシュはまだまだ翻訳されていないのがたくさんあるので、ぜひどこかがんばってくれないかなあ(アリンガムはちょっと好みかどうか迷っています)。そういえば、長崎出版からマイケル・イネスの「証拠は語る」がでるとかいう情報があったけど本当だろうか?舞い踊っちゃいますよ。

某所で7月頃書いた上期の私のベスト本です(今頃・・・)。 

長編

 「ロリータ」(若島版)

ウラディミール・ナボコフ 代表作というかナボコフの特徴が良く出た作品であることは間違いないと思う。若島版と書いたのは比較の結果ではなく、単純にそちらしか読んでいないため。しかし今回のごっつんごっつんした文体、すごく楽しかった(のは自分でも危ないと思う)。無人島に持っていく一冊、としても他にアメリカのガイドブックや他の引用される作家の本やポーの「アナベル・リー」などもって行きたくなるに決まっているので一冊にはなりません、残念。顎十郎はちょっとやりすぎ。

 「巨匠とマルガリータ」

ミハイル・ブルガーコフ 今頃読んだので。こいつはすごい、すごすぎます。これだけどたばたに書きながら、最後はハ・ノツリとピラトのことが、巨匠とマルガリータのことが、弟子の詩人(最後は教授になってますが)のことが、モスクワの人々ことが、そしてヴォランドやそのつれのことが心に残るのはなぜなんだろう。。。最後はメタフィクションに突入するとは、もうやられまくりました。絶対にいつか読み返したい小説。

 「ミルチャ・エリアーデ幻想小説全集第1巻」

ミルチャ・エリアーデ ま、これだけはいっていりゃベスト10にははいるわな。つか10冊も読んでないけど。「蛇」とか「大尉の娘」が好きだ。ブルンドゥシュには「蛇」のアンドロニク的な感じもするなあ。この「大尉の娘」はおもしろかったし作品として好きだ。なんというか成立しない会話に以後の作品のような影を感じます。

短篇

「クライム・マシン」

ジャック・リッチー 去年の本ですが、甘ったるいと嫌だなーと思っていたら、カカオ分90%くらいの苦さであったので良かった。どうもスタージョンとかデヴィットソンは一部合成甘味料のような甘さを感じて、そういうところが嫌いなんだけど、リッチーのはそういう部分のカロリーオフ、大人の短編であった。またジャック・リッチーの本でるような感じなので買おうと思う。

「デス博士の島その他の物語」

ジーン・ウルフ 中篇集ですが、「島三部作」まとめて読めるのはうれしい。また、前に読んだときよりはいろいろなことを発見しているようだよん。「アメリカの七夜」もSFマガジン買いながらほっておいたからなあ。どれも良いのだが、「眼閃の奇蹟」は、へえーこんなふうなのも書くんだあと新しい発見があったのと、なんか暖かくてよい。特に最後は心に残るよ。

特別枠

「銀河ヒッチハイク・ガイド」

ダグラス・アダムス なんか上の作品群とは別方向に走っている気がするので特別枠で「宇宙の果てのレストラン」もあわせてということで。

 ・最優秀登場人物賞  マーヴィン

・最優秀技術賞    無限不可能性ドライブ

・最優秀番号賞    42

・かわいそうで賞   マッコウクジラ

・実は寝てたで賞   ディープソート

DVDはあんまりおもしろくなかった。「宇宙クリケット大戦争」も読まなきゃ。

コメント

こんにちは。はじめまして。
「誰も教えてくれない」が笑えましたね。
終盤になって、探偵が知らなかった事実(でも他の関係者は皆知ってる)が
次から次に出てくる展開、これ最高です。
「可能性の問題」の最後のページの、
「弓と矢を使ったからだと思います」にも大笑いさせてもらいました。

木曽さん、はじめまして

甘ったるくないところが好きです。「誰もおしえてくれない」とか探偵小説のフレームを茶化していておもしろいですよね。リッチーのものってまだまだあるんでしょうか?そのうち出るとよいのですが。

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