« 乱鴉の島 | メイン | シルバー假面 »

March 13, 2007

●日々是型本格(日本編)

ちょっと「本格」とかかっこよく書きすぎたので、自分の思う理想の本格をあげてみようと思ったら「変格」っぽかった。すんません。ただ、私の好みはこういうやつなので、私の書く内容はそれを加味して判断していただきたいです。まずは日本編。 もちろん読んでないのも多いし、そのうち気分で変わるのもあるかもしれませぬ。

長篇

高木彬光 「人形はなぜ殺される」
鮎川哲也 「りら荘事件」「朱の絶筆」
坂口安吾 「不連続殺人事件」
島田荘司 「占星術殺人事件」
笠井潔  「天啓の宴」「天啓の器」
麻耶雄嵩 「夏と冬の奏鳴曲」「蛍」
奥泉光  「モーダルな事象」「グランドミステリー」
倉知淳  「星降り山荘の殺人」
山田正紀 「ミステリ・オペラ」
京極夏彦 「鉄鼠の檻」

別格
小栗虫太郎 「黒死館殺人事件」
夢野久作 「ドグラマグラ」
中井英夫 「虚無への供物」
竹本健治 「匣の中の失楽」


中篇

法月倫太郎 「法月倫太郎の功績」
麻耶雄嵩 「名探偵木更津悠也」
北村薫  「冬のオペラ」

短篇

麻耶雄嵩 「メルカトルと美袋のための殺人」
泡坂妻夫 「奇術探偵曽我佳城全集」
中井英夫 「人形たちの夜」

別枠
久生十蘭 「顎十郎捕物帳」
坂口安吾 「文明開化安吾捕物帳」
日影丈吉 「ハイカラ右京探偵全集」

長篇

高木彬光 「人形はなぜ殺される」

書き方がべただったり、神津恭介がなかなかわからなかったり、いろいろ欠点もあるけど、トリックや犯人像、その謎の構築はすばらしいと思う。また犯人の最後の計画があまりにすごい。「人形はなぜ殺される」すべてがこの言葉に集約されるのがあまりに美しすぎる。

鮎川哲也 「りら荘事件」「朱の絶筆」

「りら荘事件」は私の思う本格のまさに本道です。人形ほどの大技がなくて、小技の組み合わせだが、その緊密さがよい。「朱の絶筆」とともに私はきざな星影龍三派である。

坂口安吾 「不連続殺人事件」

いや、読んだら面白かった。ちょっと典型的な感じもするけど、館ものとしては良い線行っているんじゃないでしょうか?

島田荘司 「占星術殺人事件」

「ネジ式」でもよいんだけど、やはりインパクトが大きかった。全体のつくりや、最後のほうはちょっと甘いなとも思うけど、謎の隠し方がうまいと思う。

笠井潔  「天啓の宴」「天啓の器」

カケルくんシリーズよりは実はこちらが好きだ。なんとなくあいまいな異世界が横にある感じがたまらん。「天啓の虚」は。。。待ってるんだけどなあ。

麻耶雄嵩 「夏と冬の奏鳴曲」「蛍」

麻耶雄嵩の場合は「鴉」でもよいのですが、ソナタのほうは、まあわけがわからんわけですが、有り得ないトリックですが、もはや神様も共犯ではと思わせる喪失感がある。蛍はちと技巧にすぎるかもしれんが、これは推理小説として一応形式が整ったほうということで。最後の虚無感ということでは「神様ゲーム」も良いなあ。

奥泉光  「モーダルな事象」「グランドミステリー」

ミステリーというかミステロイドなのかでもどっちもおもしろくて、まず文章を読んでいるのが楽しくて、しかも最終的な世界の構築感覚が私にとっての「本格」なのであった。

倉知淳  「星降り山荘の殺人」

けっして星園詩朗のファンではないですが、この系統のものでは高度でうまいと思う。最後もなかなか効果的。こういうのはインパクト勝負なので続けてやってはいかんです。

山田正紀 「ミステリ・オペラ」

前にも書いたけど山田正紀の他の「神曲法廷」「螺旋」「妖鳥」などは偶然性が私の好みにあわないし、「僧正の子守唄」は全然元ネタの世界とあってないので嫌い。ただ「ミステリ・オペラ」は偶然があってもそれがまるで運命の必然ででもあるかのように扱われるので好きだ。でも「マヂック・オペラ」は読んでないなあ。

京極夏彦 「鉄鼠の檻」

好みから言うと「魍魎の匣」なのだが、あれは推理小説というよりは怪奇江戸川乱歩型利用なので、本格としては「鉄鼠の檻」をとることにする。トリックよりもこの世界を考え付くことがすごいと思った。

別格
小栗虫太郎 「黒死館殺人事件」
夢野久作 「ドグラマグラ」
中井英夫 「虚無への供物」
竹本健治 「匣の中の失楽」

これらは私にとってもちろん「本格」で「別格」です。

中篇

法月倫太郎 「法月倫太郎の功績」

冒険でも新冒険でもよいが、法月倫太郎は最高の中篇プレーヤーではないかと思っていた。ただ難しいポジションだけど。どれもロジックと謎、最後の一発となかなか凝りに凝ったつくりであるし、よくできていると思う。長編はちょっとね。「生首」もあまり好きではない。

麻耶雄嵩 「名探偵木更津悠也」

上記のように思っていたのだが、 「名探偵木更津悠也」で麻耶雄嵩も中篇うますぎると思った。麻耶らしく変な引っかかりはあるが、中篇としての構築度は最高レベルである。ただ実朝も人が悪すぎる気はするが。

北村薫  「冬のオペラ」

これは昔読んだときになかなかすごいなと思った記憶があるので。今でもそう思うか読み直してみたい。円紫さんシリーズなどはちょっーと甘い。

短篇

麻耶雄嵩 「メルカトルと美袋のための殺人」

本格というにはちとひどすぎるかもしれんが、好みなのだ。

泡坂妻夫 「奇術探偵曽我佳城全集」

これはあまりにきまりすぎているので一家に一冊そろえましょう。

中井英夫 「人形たちの夜」

とらんぷ譚を選ぶと楽だが、さすがに54話もあるとなんでもありなので。 「人形たちの夜」で連作短篇集の楽しさを知りました。貴腐という言葉も覚えました。

別枠
久生十蘭 「顎十郎捕物帳」
坂口安吾 「文明開化安吾捕物帳」
日影丈吉 「ハイカラ右京探偵全集」

これらはもちろんいわゆる「本格」ではないのだが、私のココロの「本格」である。短編はそんなに複雑な推理はできないので、ココロひかれる謎と切れ味の良い展開があればよい。ついでにキャラがたっているとうれしい。読んでいない人がいたら読んで欲しい。たとえ若林豪で見ることができなくてもサイコーです。

コメントする