January 15, 2009

●青い蛇

book-ThomasOwen-01.jpg 買ったままつんであったトーマス・オーウェンの「青い蛇」を読んだ。トーマス・オーウェンはベルギーの作家だということだが、すみません、知りませんでした。副題に「十六の不気味な物語」とあるとおり、怪しげで、そう表紙にルドンの絵画が使われているがそんなような、ベルギーだからクノップフであるような、あるいはクェイ兄弟の作品の断面のような象徴主義的ともなんとも怪しげな短編集です。

同一作家の短編集だと16もあると同工異曲で最近は飽きちゃうことのほうが多いんですが、これはおもしろいです。なんつうか読者が一番不安定な状態にきたところでほったらかされるような未着地感がたまらん。割り切れる話でないと納得できない人は手を出さないでください。 また、puhipuhi師の解説もよかった。そうか四者のもつれあいであったか。幼い私にはとてもわからないものであった。

もともとの短編集は日本で「黒い玉」と分冊されているようですが、「黒い玉」も買わなくては、とも思うがもう少し具体的なものを集めているようなので、たぶん私の好みとしては「青い蛇」のほうかなとも思う。ま、読んでみなくてはわからんのだが。

November 29, 2008

●エンジン・サマー

book-JohnCrowley-02.jpg 噂を聞きながら本当かい?と思っていたジョン:クロウリーの「エンジン・サマー」が本当に復刊された。夢じゃないかと思った。扶桑社えらい!時間かかっているなあと思ったら、改訳もされているのね。大森望さんえらい!つうか福武書店版が室内行方不明中なので買うしかないじゃん。文庫だし2冊買っておくか。。。もちろんバックアップ用の意味もあるが、なんか本当にプレゼントしたいときに渡すとか。相手は意味がわからんから読まずに捨てちゃうんだろうなあ。。。

で、昔は最後の最後に本当に泣けたもんだけど、今でも泣けるかどうかはちょっと心配ではある。でも前の「塵よりよみがえり」でうるうる来ているくらいなら大丈夫かもしれん。私は読書については貴方は貴方私は私で、趣味は人それぞれなのであんまり推薦はしないんだけど、これはちょっと押し付けたいです。ファンタジー(針ーぽったーとかじゃないよ)が好きなら、ぜひ読んでおいてほしい。

大森望さんのサイト見ても極小部数らしいのでみんながんばって入手してくれ。で、「アエジプト」四部作は邦訳されんかのう。。。

November 23, 2008

●塵よりよみがえり

book-Bradbury-01.jpg ジョージ・ヒルの「20世紀の幽霊たち」を読み始めて、うまいなー、作品としてはおもしろいなーとは思ったものの、どうも私の体にはあわないので3,4短編でやめてしまった。

 そもそも具体的なホラーというやつがあんまり好きではなく、ついていけるのはポーとか「宇宙的恐怖」でありますラブクラフトなんぞですので、とてもモダンホラーにはだめだめな人間なのであります。そう、体が求めているのはダークファンタジーである。

というわけで自分的お口直しにレイ・ブラッドベリの「塵よりよみがえり」を読んだら泣けた。私の体にはこれだよ。

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September 05, 2008

●氷

book-AnnaKavan-01.jpg昔サンリオ文庫で出ていたということだが、まーったく覚えてないわ。そんなアンナ・カヴァンの「氷」を読みました。。。が、おいおい夏に読んでも暑くて氷っぽくないぞ。普通の夏ならよいが、今年の京都では読んでる自分が朦朧として崩れそうでございます。もっとも私の朦朧に少女は出てこなかったですが。

話はとある北のほうの国、「私」と私が愛する「少女」とその少女を捕らえる「長官」、そしてすべてを飲み込む「氷」の予感。ただ、この私がどうも「信頼できない語り手」で、妄想的であるとか長官との二重性とかそれだけなら陳腐な感じなんだけど、やはり「氷」のヴィジョンこそが通奏低音のようにうまく響いているのだと思った。最初はフェミニズム小説だといやだなーと思ったけど、そんなことなかった。

少女、セグロカモメ、氷、戦争、ということで、なんか押井守的モードで脳内翻訳して読んでしまった。。。天使の卵?宮崎駿モードでは・・・ちょっと無理。

August 28, 2008

●マイナス・ゼロ

book-Hirose-01.jpg書店でみていると広瀬正の「マイナス・ゼロ」が復刊されていた。「エロス」や「ツィス」なども復刊されるらしいので、この際全部もう一回買っておこう。昔読んだのは高校か大学の頃か忘れちゃったんだけど、すんごく面白かった記憶だけが残っていて、登場人物や時間の関係はまーったく覚えていない。でもタイムパラドックスもので、ほぇーと思ったものだ。。。カバーも同じだった気がするが。

三冊の中ではやはり「マイナス・ゼロ」かな、という気もするが、「エロス」「ツィス」もそれなりに捨てがたいなあ。また、実は短編集の「不思議の国のアリス」や「T型フォード殺人事件」が好きだったりする。でもやはり昭和へのノスタルヂアで「マイナス・ゼロ」かな。そういうところは奥泉光の「グランドミステリー」を思い浮かべる。

広瀬正の本は読んでいたわけだが、読んでいない本でも、ジーン・ウルフの「新しい太陽の書」も復刊されたので4冊買ったかと思うと、小畑健さんの表紙で5冊目まで出すとは・・・。でも私は復刊されるだけでよろこんじゃうので、広瀬正全部ともう一回「新しい太陽の書」5冊も買うのだ。(読むのだと自信もってかけないのが悲しいね)

May 20, 2008

●天使の牙から

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むかーしむかーし好きだったジョナサン・キャロルですが、いつのまにかなんだかなーになっていた。「天使の牙から」は単行本で10年ほど前に出ていた気がするが、その頃にはすでに単行本では買う気はなかったようだ。すぐに文庫になると思っていたのかもしれないけど。で、1年ほど前になんか文庫本ででたので買っておいたのだが、まあキャロルだからなあ。。。というわけで読んではみたものの。

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January 13, 2008

●小松左京

book-KomatsuSakyo-01.jpgbook-KomatsuSakyo-02.jpg

連休明けの仕事5日間は長いです。さてその後、金沢へ。最近は暖かかったみたいだが、土曜日日曜日は寒く、特に日曜日は雪でした。まあ金沢へいっても天気もあって書店へいっているだけですが。

最近SFとか読んでいないんですけど、イーガンとかはちょっとねー、ということで、昔懐かしい小松左京の本を読み直したいなあと思っていたのだが、いつでも買えると思っているうちにハルキ文庫はあんまりみなくなりました。が、金沢で発見。中でも「ゴルディアスの結び目」と「結晶星団」が読みたいですー、ということで購入した。いまでも感動できるだろうか。やはりこういうのは読む年代の感受性によってちがうのじゃろか。本に限らず音楽も70年代、80年代のものを買いなおしていたりで、なんか現実逃避気味。

July 20, 2007

●ゴーレム100

book-Bester-01.jpg思えば上半期は推理小説系統あいか読まなかったので、某場所での上半期には参加できず。でもまだまだ読む気おこらないなあ。。。ではあるが、アルフレッド・ベスターの「ゴーレム100」を読んだ。うーん、すごい!としか言いようはないんだけど、しかめっ面で読むのではなくげらげら笑いながら読めたのでよかった。これもつぼにはまったということである。

で、内容はというと、8人の蜜蜂レディがでてきて、Mr.シマ(コウサク?)がでてきて、美貌の黒人で精神工学者グレッチェン・ナンがでてきて、怪しく悟ったインド人の警察官インドゥニがでてきて、それぞれにからまりながらゴーレム100に立ち向かう?のであるが、 この気が狂ったような世界観と展開が面白すぎる。

で、筒井康隆の「パプリカ」を思い出してしまったのだが、こういう先達があるのね。

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September 07, 2006

●ほとんど無害

book-Galaxy-05.jpgまあ私の書いていることもほとんど無害であるとうれしいのだが、ダグラス・アダムスの「ほとんど無害」はほとんど無害というものではなく、そのあまりの哀しさに唖然呆然、放心の銀河ヒッチハイクガイドの最終巻であります。おお、三島由紀夫の「豊饒の海」四部作の天人五衰なみの喪失感でございます。

人によっては「許せん、こんなの銀河ヒッチハイクガイドじゃない!」ということもあるだろうが、私には第4巻、第5巻はなぜか心に残る、というかひっかかるものになったと思う。たぶん1~3巻ののりだと、もちろん楽しんだだろうけど、こんなふうに心に残りはしないだろう。もっともおバカSFとして、そんな残り方は嫌だ!という気持ちも重々わかる。。。難しいね。2つの第5巻が欲しかったね。で今回は、銀河4つ。

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August 14, 2006

●さようなら、いままで魚をありがとう

book-Galaxy-04.jpg続いてダグラス・アダムスの「銀河ヒッチハイク・ガイド」シリーズの第4弾の「さようなら、いままで魚をありがとう」を読みました。ちょっと今回は雰囲気が変わって地球上・・・っぽい。もちろんいろいろあるけど基本は恋愛ものみたいな感じだ。じゃあだめかというとけっこう面白い。ちょっと皮肉の効いた書き方が好きなのだ。

だけど、もうシリーズものだということを考えると、ちょっとばかし今までの登場人物とかやはり物足りないところもあるし、ちと書き方のパターンも見えていることもあって、星3.5ということで。このあたり、短時間で書いていることもあるのかなあ。手癖というかギャグやひねりの書き方が少しパターン化されてるんですよね。

あと「彼」の最後のシーンは悲しいといって良いのか、うーん、複雑な心境。もっと活躍してほしいよねえ。アーサーよりも。

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July 26, 2006

●宇宙クリケット大戦争

book-Galaxy-03.jpg少し間をおきましたが、「銀河ヒッチハイク・ガイド」「宇宙の果てのレストラン」に続いてダグラス・アダムスのシリーズ3作目の「宇宙クリケット大戦争」を読んだざんす。「前二作に比して出来が悪い」と言われたりもしますが、なんのなんのおもしろいじゃありませんか。まあでも確かに「前二作に比して出来が悪い」と言われる理由もわかるような気がします。

私はダグラス・アダムスに甘い、というのはギャグのバランスや間が私にあっているからだろう。でもこれはイギリス以外だとクリケットの知識もあってちと入りにくいのかなあ。また、ちょっと途中の状況説明が立体ビデオでひねりがないので、そのあたりは不満です。 また個人的にはマーヴィンの活躍具合がもの足りないかな。でも小ネタを含めけっこういいと思うんだけどなあ。というわけで星4つ。しかしクリケットは変なスポーツだ。

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July 18, 2006

●虫の生活

book-Pelevin-02.jpgヴィクトル・ペレーヴィンは角川書店(つうかキャノンゲイト社だな)の「新・世界の神話」シリーズに「The Helmet of Horror」というタイトルで書き下ろすらしい。ギリシア神話の英雄テセウスと迷宮の怪物ミノタウルスの物語らしいが、ぜひアトウッドのようにはならないでくれー。まあペレーヴィンなら大丈夫かな、つうかわけのわからん多層なものになりそう。。。

というか、私はまだ「眠れ-青い火影」しか読んでいないので、今回「虫の生活」を読んだのだが、いや、これがおもしろい。おもしろすぎるぞ。でも、全然わかった気がしない。というわけで仕掛けといい隠喩といいナボコフ系の好きな人に向いているかもしれない。この小説では、人が虫になり虫が人になり、それぞれにすれ違い、人生(あるいは虫生?)での何かを見つけて、あるいは失っていくのだ。ターボリアリズムとやら全開ですな。一見連作短編集のようにも見えるけど、この蜘蛛の糸のような構成は、長編小説といってよいと思う。また、SF作家とジャンルわけされたりもするみたいだけでど、普通の文学作品です。自分的には「青い火影」よりおもしろくて、他の人(虫?)にも推薦したいので星4.5ということで。で、私は何虫?でぶの虫っていたっけ?

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July 05, 2006

●パニックの手

book-Carroll-02.jpg昔ジョナサン・キャロルの「死者の書」でぐっときて「炎の眠り」でぐぉっっときて、でもその後はちょぼちょぼで、しかも売れていたのか「パニックの手」からは単行本になってしまったので、読まなくなってしまったのであった。で、その「パニックの手」が文庫本ででたので読んでみた。。。が、やはり、あんまりこないなあ。好きな人には申し訳ないが、やはり自分には合成甘味料のようにしか思えない。それでも「蜂の巣にキス」よりはもう少しきてるので、星2つくらいかな。

まず、変なことが起こるのに「神様」を持ち出しはじめてから、どの作品もそばにいるちょっと変わった神様みたいなワンパターンなのがつらい。また、少し長い作品でも中のエピソードが単発的で、小物を効果的に使えないんだよね。。。で、短編にするとどうかというと短編奇想部門は競争が激しいうえに、わたしゃこれならコルタサルやボルヘスの短編を読み返しているいいなあ、と思った。そうコルタサルをライトノベル化して超訳にしたらこんな感じになるのかな。翻訳のせいか体言止が続くのもうんざり。

で、落ちがないって書いてあるやつはできの悪いミニマル小説のようで、これは、苦笑しちゃいますです。幻想文学大賞つうのも苦笑いで、なんか別の意味で悪夢を見ているようだ。まあ「黒いカクテル」は、もういいよな。基本的には壮大なアマチュア作家という意見はあんまり変わっていません。

April 03, 2006

●宇宙の果てのレストラン

book-Galaxy-02.jpg続けてダグラス・アダムスの「宇宙の果てのレストラン」を読む。うーん、いい感じ。つうかこちらのほうが好きかもしれない。2巻目になると、登場人物の個性が明確になって、それに輪をかけて活躍してよろしい。特にマーヴィン様のファンである私は、その登場にあきれるやらうれしいやらでしたよ。

レストランの「宇宙の果て」は The End of Universe で、これは、まあ果てなんだけど、いろいろですなあ。うーん、いろいろ書きたいけど、でもさすがにまずいのもあるなあ。最後のフォードとアーサーの落ちはある程度読めたんだけど、それでも楽しい、楽しすぎるということで★4.5 です。もう今週には「宇宙クリケット大戦争」が出るようだけど、どうやって集まる?

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March 31, 2006

●銀河ヒッチハイク・ガイド

book-Galaxy-01.jpgDVD がでたので購入した後で、積んであった原作を読み始める。ダグラス・アダムスの「銀河ヒッチハイク・ガイド」はおばかSFの金字塔といわれているが、まさに金字塔であった。このすばらしさに星4.5。こういうの好きなんだねえ、私。でもただおばかだから、というわけではなく、おバカな題材を精緻に効果的に組み上げている構成が好きだなあ。「宇宙の果てのレストラン」も続けて読む気でいる。

一方、映画のほうは設定や各登場人物?はそれほど悪くもないが、全体のリズム感がとても悪い気がする。なんかねー、せっかくの気の利いた英吉利風風刺がただのどたばた亜米利加風になっていて、とっても嫌だ。でも脚本とかの名前にダグラス・アダムス入ってるんだよなー。まあ、そんなわけで映画のほうは推薦しません。

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March 04, 2006

●デス博士の島その他の物語

book-Wolfe-02.jpgジーン・ウルフは疲れる。少なくとも2回は読み直しを強要されるからで、いやーんなんだけど、1回読み通しただけでわからないとその隔靴掻痒感はより一層いやーんなので結局読み返すのだ。だから一冊読むのに 2~3 倍時間がかかるんですー。ついでに書く量も増えちゃう。

ただ、遊べる範囲からいうと「ケルベロス第五の首」のほうがいろいろ突っ込みどころがあっておもしろいかもしれません。「デス博士の島その他の物語」は「接続された女」のほうで読んでいたんですが、やはり「島三部作」まとめて読めるのはうれしい。また、前に読んだときよりはいろいろなことを発見しているようだよん。「アメリカの七夜」もSFマガジン買いながらほっておいたからなあ。どれも良いのだが、「眼閃の奇蹟」は、へえーこんなふうなのも書くんだあと新しい発見があったのと、なんか暖かくてよい。特に最後は心に残るよ。ということで、「アメリカの七夜」までは星4つくらいかなーと思ったんだけど、「眼閃の奇蹟」を加えて星4.5。

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February 21, 2006

●みにくい白鳥

book-Strugatsukij-03.jpg週末に DNS とメールのほうを新サーバに移行してみたが、はて大丈夫だろうか?こういうとき1回線しかないとつらいなあ。。。まあ見えてるみたいだし、朝メールもきてたから大丈夫かな。SPAMメールはこういうときだけ役立つなあ。

さて、続いて A&B ストルガツキーの「みにくい白鳥」です。あんまり同じ作家を続けては読まないようにしているんですけど、今回は、作家自身が「モスクワ妄想倶楽部(びっこな運命)」と「みにくい白鳥」を組み合わせてひとつの作品「びっこな運命」にしているようなので、続けて読んだ。まあ「モスクワ妄想倶楽部」のほうはすこーし単独では弱いのかな。まあそれはそれとして単独では星4つで。

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February 18, 2006

●ロシア・ファンタスチカ(SF)の旅

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東洋書店からユーラシア・ブックレットという小冊子のシリーズがあって、「ロシア・ユーラシアを多面的に紹介する唯一のシリーズ!」だそうですが、「ロシア・ファンタスチカ(SF)の旅」はブルガーコフやストルガツキー、ペレーヴィンを読んでいることもあって読んでみた。短いのですぐ読めるんだけど、最近の作家の名前は読んだことがないので、ペレーヴィン以外作家名とイメージが結びつかず困ったちゃん。第2章の作家の系譜はゴーゴリ、シチェドリン、イリフ&ペトロフ、ブルガーコフ、ストルガツキーが出てきてちょっと参考になる。ただ全体的な量は非常に薄い。まあ600円ほどだしね。

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February 11, 2006

●モスクワ妄想倶楽部

book-Strugatsukij-02.jpgブルガーコフの「巨匠とマルガリータ」が面白すぎたんだけど、並列にミルチャ・エリアーデの「エリアーデ幻想小説全集〈第1巻〉」を読み始めていて、「令嬢クリスティナ」「蛇」を読み終わり、「 ホーニヒベルガー博士の秘密」を読んでいるが、うーん、終わらん。さすがに幻想小説全集は特盛クラスの分量です。

さてそうしているうちに、もうひとつのCPUでは並列に次の本を読むわけで、なんにしようか迷ったんだけど、ブルガーコフつながりで A&B ストルガツキーの「モスクワ妄想倶楽部」にしました。ロシアもの続けるのもどうかと思うんだけど、もうほとんどブルガーコフへのオマージュにあふれているので、いまじゃないと感動できない気もする。逆に言うとブルガーコフを先に読んでいてよかったなー(ストルガツキーの本のほうが先に積まれたわけで)。文壇というか作家連盟の家がおもしろすぎるなあ、小説に関するびっこな運命も心に残るなあ、でもタイトルは「びっこな運命」のほうが良かったなあ、というわけで星4つだけど、この本から読むことはまったく薦められない。少なくともストルガツキーに関しては何か他の作品から読んでいることが望ましいし、ブルガーコフの「巨匠とマルガリータ」は読んでからのほうが良い。もう感動の仕方が違います。

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December 23, 2005

●地球礁

book-Lafferty -02.jpgR・A・ラファティ(Raphael Aloysius Lafferty)の「宇宙舟歌」が翻訳されたんだけど、あいにくまだ「オデュッセイア」は読書中ということで、買ったままになっていた「地球礁」を読んだ・・・が、これはアイルランド口承文学のパロディっぽいところもあってそれを読んでからのほうが良かったかなあとちょっと思った。でも挫折中だけど、フラン・オブライエンの「スィム・トゥー・バースにて」を途中まで読んでいたので、双方アイルランド伝説の語り口をもじっているんだなあとか。

で、プーカ人おもしろすぎ。でもバガーハッハ詩なんて本当に効いているのかどうかわからんのもおもしろすぎる。そのおもしろさは以下の如し。。。ということで、星4つ。もうそろそろ手に入れにくくなりそうなので、ちゃんと積んでおこうね。

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November 18, 2005

●どんがらがん

book-Davidson-01.jpgアヴラム・デイヴィッドスンなんて知りませんなー、殊能将之氏推奨かあ、と思って読み始めたが、解説を読んでいて思い出した。そうだ、クイーンの代筆やってたじゃん、しかも私があんまり好きではない「第八の日」に途中で放り投げた「三角形の第四辺」。それじゃだめだめかなというと「どんがらがん」は少し面白かった。で、わかったのはデイヴィッドスンはプロットというかアイディアへの肉付けはできるが、登場人物を肉付けしていく筆力ではないということだ。クイーンのものは梗概以上におもしろくなかったのは、やはり自分のプロットでひねくる文体なんだよなあ。登場人物を肉付けしていく文体じゃないのね。

タイトル作の「どんがらがん」が面白い。これがないと星3つなんだけど、「どんがらがん」は星4つ。で、本としては星3.5ということで。

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April 23, 2005

●光の王 など

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疲れたので軽いものを読もうと思って会社の近くの書店にはいったら、海外作家の文庫が作家名順になっていた。これは醜くて、、、もとい見難くて困る。この書店はかつて雑誌でも「袋に入れますか?」に対して、要らないと言うと、すぐにシールを貼りやがった。雑誌というのはあるけど、本への愛情のない本屋は大嫌いだ。

さて、関係ないところで怒ったところで、本棚は作家順で見る気がおきず平積みをみていると、ロジャー・ゼラズニイの「光の王」が復刊されていた。これは昔大好きなSFだったので他の人にも読んで欲しいと思っていたが、絶版だったのじゃよ。ゼラズニイは他も少し読んだけど、個人的には「光の王」が一番だ。コンラッドとかはギリシャ神話に疎いので自分でも楽しみきれていないような気がする。「光の王」はインド神話だったりするのだが、これは多くの人が知識なしレベルではじめられるからなのかな?私はこの本で「インドの神々」に興味を持ちました。復刊なんだけど、第一版になっていたなあ。。。表紙も昔は萩尾望都だったような気が。あ、解説も新しくなっていました。ゼラズニイでは「ドリームマスター」をなんとかしたいのでぜひ続けて復刊してもらいたいぞ。

でも、「光の王」は持っているので購入せず、藤木稟の新シリーズらしきものがでていたので購入。「殉教者は月に舞う」というタイトルですが、朱雀十夜と十八?十五は?まあ十五は設定が難しいなあと思っていたのでそれは読後に。

April 17, 2005

●死者を統べるもの ナズュレットの書2

マカヴォイの「ナズュレットの書三部作」の第二巻です。ぼくにはおもしろいんだけど、なんかマカヴォイの売れない理由もよくわかる気がする。だいたいクライマックスでけっこう絶体絶命感をだしておいて、最後はその落ちでいいのか!というのは、人間の甘いぼくでも少々まずいんじゃないのーと思ったり。でもそういうストーリー的なところに味があるわけではなく、むしろその中でのナズュレットとアーリンの行動に味があるわけで、そういう意味では良くも悪くもマカヴォイらしいと思う。

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March 28, 2005

●世界のレンズ ナズュレットの書1

マカヴォイの「ナズュレットの書三部作」を読み始めた。これは二巻まで邦訳ででていて、そろったら読もうと思いつつはや十年。まあ理由は売れなかったからか出版社が変わって契約に問題が出たのかはしりませんが、原書で3巻目を手に入れたので、何とか読むじゃろとの仮定の元に読み始めたのが、第1作になる「世界のレンズ ナズュレットの書-1」を読了。久々のマカヴォイで疲れたけど面白かった。アイルランドの作家って変な人が多いのかな。

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February 13, 2005

●眠れ―作品集「青い火影」〈1〉

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最近ロシアものに傾いている。音楽はステインベルクの交響的前奏曲とかカバレフスキーのピアノ協奏曲とか。読み物ではブルガーコフとかナボコフとか(ロシア時代の短篇ね)。その流れというわけではないのだが、ヴィクトル・ペレーヴィンというロシアのSF作家の短編集「眠れ」を読んだ。これはおもしろかった。

ロシアものは全く詳しくないんだけど、ペレーヴィンはブルガーコフ、ストルガツキーの流れにつながるロシアン・ファンタスティカの継承者ということでよろしいか?始祖のゴーゴリも読んでおかないといけないなあ。。

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February 01, 2005

●悪魔物語・運命の卵

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ロシアというかソ連の文学作品は、トルストイやドストエフスキーを遠い昔に読んだのを別にすると、ストルガツキーしか知らぬ。そのストルガツキーの「滅びの都」を購入したついでにオビ文句がおもしろそうだったので、ブルガーコフの「巨匠とマルガリータ」(上・下)も勢いで購入。でも分冊ではちと高価ですぞ。

最初からそちらに挑戦しても良いが、読みやすいところからいきたいなーというのもあって探したところ、岩波文庫から「悪魔物語・運命の卵」という中編集がでているので、そちらを先に読んだ。知らない作家で、SFっぽいとも書かれていたので、はずれだと嫌だなーと思っていたが、全くそんなことはなく私にとっては大当たり、おもしろすぎる。

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November 16, 2004

●すべてのまぼろしはキンタナ・ローの海に消えた

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ジェイムズ・ティプトリー・Jr の「すべてのまぼろしはキンタナ・ローの海に消えた」が出ていたので、イーガン不満の勢いで読んでしまった。ジェイムズ・ティプトリー・Jr ってハードな SF っぽいイメージが強かったんだけど、ハヤカワFT文庫からでています。でも私にはこういう作品のほうがおさまりが良い。これはいいですね。ティプトリー版ラテン・アメリカ幻想文学みたい。ほとんどフエンテスの初期短篇だよ。SFの要素もあるといえばあるのだが、SFとはいえないから未訳だったのかな。もったいないですねえ。今回はとても満喫しました。

ただ、Webの書評などではSFファンからは圧倒的に評価が低い気がする。まあSFじゃないし。しょうがねえなあ。

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November 14, 2004

●祈りの海

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「アレキサンドリア四重奏」に今ひとつ入り込めず、だらだらと「ジュスティーヌ」を読みながら、他の本も読んでます。というわけで、グレッグ・イーガンの短編集の「祈りの海」が先に読み終わった。まとまなSF久々じゃのう。。。ってテッド・チャンを最近読んだんだっけか。で、推薦されて読んだのですが、うーん、ちょっとね。

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October 26, 2004

●世界終末十億年前

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最近レムの「ソラリス」が新訳ででたようだが、対抗するために?ストルガツキーの本を読もうと思った。なぜか私はストルガツキーの本をたくさん購入していて、しかもけっこう読んでいるのに、何一つ覚えていません。うーん、ということで「世界終末十億年前―異常な状況で発見された手記」を再読。

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October 15, 2004

●20世紀SF〈4〉1970年代―接続された女

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ジーン・ウルフの「ケルベロスの第五の首」を読んだので、ついでに手に入る短篇も読んでおこうと思った。で、河出書房のアンソロジーである「20世紀SF〈4〉1970年代―接続された女」を購入。ウルフでは、あと先月のSFマガジンの特集号で「アメリカの七夜」など中篇+2短篇が手に入るのですが、他にもあるのかな。

私はSFには疎く、「20世紀SF〈4〉1970年代―接続された女」をつらつらみるに、この時代あたり(あるいは60年代も少々)から読み始めているようだす。ハードSFとしての根本的な体験をしていないので、なかなかSF魂が燃え上がったりはしないのであった。でもきっとSFとしては良い本です。途中で挫折したんですが、まあ自分の記録として。

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October 03, 2004

●「あなたの人生の物語」続き

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というわけで、全部読みました。私の趣味では「あなたの人生の物語」「地獄とは神の不在なり」がツボに入った。全体的には良い作品集だと思う。どうもやはり私の観点はSF的な知識よりも、全体の形式感で楽しんで見ているようである。

さて、やっとリョサに戻れるか?しかしその上皆川博子の「薔薇密室」まで買ってきてしまった。うーん。

以下ネタバレあり。

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October 01, 2004

●「あなたの人生の物語」memo

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困ったことにノータイム購入リストに入っている法月綸太郎の長編がでてしまった。「生首に聞いてみろ」ということで、とりあえず購入。 綾辻逝人、法月綸太郎、麻耶雄嵩×2が出版されるとは、17年蝉が狂いなくが如くである。また数年沈黙するのだろうか?マーケティングして、ずらして出版してもらいたいもんだと思う。

現在バルガス=リョサの「フリアとシナリオライター」を読んでいるのだが、真中あたりでテッド・チャンの「あなたの人生の物語」に寄り道している。私の場合ミステリの割り込み順位は高い(流して読む)ので、ここで法月綸太郎がハイってしまうとリョサに復旧できるかどうか大いに不安。スタックオーバーフローの可能性大。

で、その上PS2で「Tales of Symphonia」など始めてしまったので、もー曲なんか触っている暇がないのである。しかもPCの「幻想三国志」もやりたい!そろそろ秋の夜長とはいえ困ったもんです。スカルラッティでお茶を濁しているとはいえ、どうにも乗り気でない。ま、そんなときはやらない、と。次はマンドリン合奏曲でも2つ3つ小品をと考えてはおりますが、何時になることやら。

以下は復帰が不安なので、とにかく「あなたの人生の物語」の途中メモです。

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September 03, 2004

●「ケルベロス第5の首」の追加

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「ケルベロス第5の首」の追加検討録そうとう修正しました。自分的にはこのあたりで満足です。

注意!以下ねたばれあり。

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August 29, 2004

●ケルベロスの第5の首

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ジーン・ウルフの「ケルベロスの第5の首」を読みました。これは国書刊行会からの「未来の文学」として発刊。うーん、これは相当読み込まないとと楽しめませんね。叙述トリックについては、最近作品の質はおいといて新本格その他で嫌というほど見てきたのでもはや驚きはありませんが、各小説(3つの中篇からなる連作です)の主題は考えさせられるし(永遠の問題とはいってもさすがにちょっと古い気もするけど)、背景の構造がすばらしく、やはり傑作なんでしょう。

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August 25, 2004

●ウィンターズ・ティル(下)

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私の100kmマラソンみたいなもんでした。へろへろになりながら、なんとか読了です。ふぃー。しかし、「鎮魂歌」の不満で発火した私のファンタジー魂は、クロウリーの「ナイチンゲールは夜に歌う」でさらに燃え上がり、その火は「ウィンターズ・テイル」で物語内のNYに引火し、都市の破壊と再生の元に見事に鎮火したのであった。あー疲れた。いやしかし現代まれに見る物語性ですね。

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August 08, 2004

●ウィンターズ・テイル(上)

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「冬のソナタ」がはやっていても、ひねくれた私としてはそのまま見る気になんないだろ?ということで、マーク・ヘルプリンの「ウィンターズ・テイル」の上巻を読んだ。いやあこういう洒落の為にも本は積んでおくものである。本来は下巻も読んでから書くべきなんだろうけど、このすばらしさを最近は「忘れる」ので、今メモしておくことにします。

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July 17, 2004

●ナイチンゲールは夜に歌う

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燃え上がったファンタジー魂をどうにかするために、ジョン・クロウリーの「ナイチンゲールは夜に歌う」を読んだ。うー、さすが、クロウリー、SFとファンタジーを掛け算したような満足感ですが、これ普通に読んでついていけるのかしら、とちょっと不安。

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July 11, 2004

●鎮魂歌(レクイエム)

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大学を卒業した頃、いろいろな作曲家のレクイエムを集め始めたことがある。ヴェルディやモーツアルトは当然として、ヒンデミットやブリテン、ハウエルズ、フォーレ、ブラームスなどや珍しいところではブルックナーやヴィラロボスまで。しかしレクイエムは人の心に住まうジンのように増えつづけており、すべての収集は絶望的であった。あるいは飽きたのかもしれず、私が精神的に変化したのかもしれない。で、グレアム・ジョイスの「鎮魂歌(レクイエム)」を読んだ。幻想文学に形を変えたレクイエムはどうか?

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March 12, 2004

●九百人のお祖母さん

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R.パワーズの「舞踏会に向かう三人の農夫」を読み始めながら、ちょっと挫折したので、R.A.ラファティ「九百人のお祖母さん」を久しぶりに読み直した。蛙さんと牛さんが流行っていますが、ラファティの場合は蛙さんと熊さんです。しかしラファティの爆裂ぶりは凄い。

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