July 18, 2009

●フランチャイズ事件

book-Tey-05.jpg久しぶりにジョセフィン・テイのものを読んだが、やはりテイはおもしろい。事件的にはけっこうありそうだし、グラント警部が活躍するわけでもないし、というか警部だめだめじゃん。展開もある意味ありきたり・・・でも、おもしろい。なんちゅうか中途半端な善人論、人類はみな兄弟、ではなく、性根の曲がったどうしようもないやつはいる、しかもたくさん、みたいなすっきりとした感じが好きだ。それは私的にはクリスティにも当てはまるわけだが。

書いたとおり、事件も展開もありきたりだし運なのなのだが、書き方なのかいったん引き込まれるとどんどん読めてしまいます(訳はもう古いのですが)。やはり人物が魅力的なのかな。シャープ夫人とかイギリスのがんこ婆さんという感じでおもしろいし、イギリスの出てくる生活の断面も良いですな。でも事件的には、新聞の報道に載せられて暴徒が現れるとか、結局今と何にも変わらない人間の精神構造が面白いね。また主人公のありきたりの日常からの逸脱していく気分がよいのだろう。

あんまり現代的な推理小説風味を追わずに、まったりと読むことをお奨めします。在庫はないみたいなのでリンクは貼らないけど、大きな書店だと流通在庫で見るときがあります。

July 07, 2009

●探偵小説のためのノスタルジア 「木剋土」

book-Mahoro-07.jpg いつの間にか7月。。。今年も折り返してしまった。で、あんまり本も読んではいないのだが、ついつい古野まほろの新刊が出ていたので読んでしまった。今回はぞなぞな陰陽師のほうで、探偵小説のためのノスタルジア 「木剋土」でございました。

好みとしては今回のほうがどろどろの設定で好きだ。。。つうかまあ名探偵の掟みたいにそもそもパロデイ的だし。で、探偵小説を解体してみると、本格本格いっている部分は付録の調書の謎解きみたいなパズルになっちゃって、小説としての物語性はどうでも良いとか書かれている動機が担うことになるわけですなあ。ついでに言うと、クイーン後期の操りのテーマは後者でしかできないのだから、そういう人々は後期クイーン否定派なのかな。しかし神様をよう否定しきらんので、言をあいまいにしている気もするな。わたしゃ、クイーンなら中期から後期派なので、本格ではなく物語性の中でしか生きられないことになる。

まあ最後の戻りはちとずるい。かも。

June 21, 2009

●三月は深き紅の淵を

book-OndaRiku-01.jpg 結局ちょっと不快なこともあって、演奏会へは行かず、今日は雨の中出社していたのであった。で、少し前に読んだ本を。

東野圭吾読み続けるのも飽きそうなのでちょっと他のものを、ということで恩田陸さんの「三月は深き紅の淵を」を読んだ。実は文庫で出た頃に購入して読み始めていたのだが、途中でやめていたらしい。いや、おもしろいのだが、どうも今回読んでみて、第二話でなんか自分的には終了感があったようだ。全部を読んでみるとよくわかることなのだが、本題は作者探しではない。。。ないのだが、当時は作者探し的に読んでいたらしい愚かな私。で、今回は「物語」愛的な部分がおもしろかった。でも第三話はちょっと悲しい。

どうも「黒と茶の幻想」「麦の海に沈む果実」「黄昏の百合の骨」 とも深く浅く関係しているようなので、読むしかないか。読んじゃうんだろうなあ。

June 12, 2009

●レイクサイド

book-HigashinoKeigo-04.jpg 結構仕事が忙しくなっているが、続いて東野圭吾読書中。「ある閉ざされた雪の山荘で」「仮面山荘殺人事件」も読んだのだが、「レイクサイド」がけっこうおもしろかった。最後の最後はちょっと好き。でも、主人公?の身勝手な考え方は一貫性がなくて、これだけがなんとかなればなあ。。。でもプロットからいくとちょっと難しいかなあ。

そういえば映画化もされているのでちょっと観てみたい。そういえば薬師丸ひろ子なのだな。

まあしかしこれ以上書くこともないので、東野圭吾も6冊ほど読んだので次は他の作家の作品にいこうと思うのであった。

June 03, 2009

●十字屋敷のピエロ

book-HigashinoKeigo-03.jpg で、東野圭吾さんを続けて読んでいる。今頃ではあるが、「十字屋敷のピエロ」を読んだ。

今から見ると結構普通の「新本格」のようにも見えるが、単なるトリックではなく、最後の一撃で全体がうまくはまった感じでこういうのは好きなほうだ。まあ動機は意味がないとおっしゃる方々もいるが、わたしゃそれがないと小説というよりなぞなぞみたいになっちゃうでしょ、という派です。まあやはり犯人には「意思」がないと。

ピエロの視点はおもしろかったけど、さすがに今読むといろいろなれちゃったなあ。でも部分まで良くできていると思います。人形師の役割がもう少しかな。

May 30, 2009

●名探偵の掟・名探偵の呪縛

book-HigashinoKeigo-01.jpgbook-HigashinoKeigo-02.jpg

TVでやっているのがくだけていてちょっと面白かったので、「名探偵の掟」を読んだ。ついでに「名探偵の呪縛」も読んだ。

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May 10, 2009

●フランクフルトへの乗客

book-Christie-03.jpgクリスティーのノンシリーズを読んでいる。「フランクフルトへの乗客」は初読であります。「20世紀少年」のはるか前にこんな作品ができているとは。

クリスティ女史の80歳を記念して書かれた作品で、スパイもの?ともとれますが、世界の現状への「怒り」が書かせているようで、なんだか頭が下がります。1970年作ということはそれから40年ちかくたっているんだが、先生すみません、人間はより悪い方向へ向かっています。馬鹿ばかりです。日本では本当にやっちゃいました。

というわけで、一応推理小説風にラスボスは誰かとか、オチみたいなエンディングもあるし、作者自身コミック・オペラと書いているけど、まあそんなことはどうでもよくて、操られることの愚かさと危なさに満ちていると思っている。 ストーリーは少々散漫だけれど、女史が言いたいことを書いたんだから、これはこれで良いのだと思う。

April 18, 2009

●天帝のみぎわなる鳳翔

book-Mahoro-06.jpgうげらぽん。天帝シリーズの第4弾が出てしまうとは。 というわけで、「秋期限定栗きんとん事件」と同時に購入して先に読み始めたのだが、結局後になってしまった。

で、今回は海です、空母です。で、第2作「天帝のつかわせる御矢」に登場した瀬見仁美紗嬢他も再出演でうれしい、、、はずなのだが、私はすでにどういう人物たちかまったく忘れていたのであった。もちろんあの主演女優も1,2と登場です。そうか、合奏に軍楽隊を持ち込むのもありなのかと眼からうろこであります。

小説内の状況を考えると娯楽で読んでいいのかという状態なんですが、その中で推理合戦してしまうあたりが業の深さを感じて良し、です。ただ、2作目以降、頸草館吹奏楽部フル出演とはいかないのがちょっと悲しい。次は全員そろってのうげらぽんな事件が読みたい。

そう、天帝の物語の設定がいまひとつわかっておりませぬ。忘れてるし。 

April 04, 2009

● 秋期限定栗きんとん事件

book-Yonezawa-08.jpgbook-Yonezawa-09.jpg

春なのに~秋期限定だよ。久々の「小市民」シリーズです。

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March 14, 2009

●殺人は容易だ

book-Christie-02.jpg クリスティのノンシリーズから「殺人は容易だ」を読みましたです。昔読んでいないと思うんだけど。。。もう慣れたパターンなので犯人はわかったけど、動機を反対に思っていた超おばかな私。そりゃクリスティーのほうが正しいに決まっています。

だいたい出だしからしてうまい。列車で同乗した老婦人の話、「殺人は容易だ」という言葉の意味、その老婦人が車で轢かれたという記事・・・もう導入してはうますぎます。ちょっと後年の「パディントン発4時50分」も思わせますが、うまいよねえ。登場人物もわかりやすいし、初期の変な燻製鰊(red herring)も出てこないし、 すっきりしてよい。変な燻製鰊は偶然の産物なんだから嫌いなんですよ、私。 この頃から不純物がとても少なくなっていいよね、クリスティ。

で、ポワロもマープルもでてこない、というか出せないストーリーだし、バトル警視も最後にしか出られないしなあ。だけど、その分ラブコメあり最後はサスペンスありで、よかったです。マーシュとかに比べると、やはり一段上の芸を感じました。

February 14, 2009

●顎十郎捕物帳

book-HisaoJuran-02.jpg京都にいる頃からほそぼそと久生十蘭の顎十郎捕物帳を読み返していた。 前に読んだときは創元推理文庫の久生十蘭集だったが、今回は朝日文庫で購入してあったものを読んだ。違いは・・・まったくわからんけど2回目でも何の問題もなく笑えた。つうか、少々歴史的なものも勉強したので、たとえば「稲荷の使」で稲荷が初午の日にお祭だったりという風俗的なものが、昔はまったくわかっていなかったのだが、今回はそうそう、とうなずきながら読めた。。。つうか十蘭の博覧強記ぶりはすごいですな。

捕物帳なので、すべてのヒントがそろっているわけではなく、そういう意味では一般的な意味では本格推理小説とはいえないのかもしれないが、私は小説としてのスピード感やユーモア、短編の落とし方も含めて私の「本格」だから良いのだ。戦前の作なんだよねえ。。。しかし阿古十郎の割り切り方というか執着の薄さがうらやましいなあ。こういう生き方をしてみたいもんだが、凡俗には無理というものであろう。だからこそ、よく考えるとだめだめなんだけど、そのあたりがかっこよくみえちゃうんだな。

で、朝日文庫としても品切れのようなので流通在庫でみつかるかどうか。。。まあ持ち歩くには本が良いのだが、幸い全24編が青空文庫に入っているので、興味のある方は読んでみてください。国書刊行会からの定本久生十蘭全集欲しいなあ。。。しかし一冊約1万円×11冊かあ。。。

January 31, 2009

●ねじれた家

book-Christie-01.jpgうーむ、つうわけで予定通りは終了せず、いや今までも予定なんてあってないようなもんだが、来週1週間京都延長戦になってしまった。風邪気味で掃除しきらんかったのでいいけどね。しかし、いるだけでいいから、つうのはなんか私は飾りの心のない仏像みたいなもんか。 ま、本気ではやらんが。

さて、推理小説らしいものを読みたくなって久しぶりにクリスティを読んでみた。ポワロものやマープルもの、トミーとタッペンスものは昔全部読んだはずなんだけど、その他のものは読んでいないものもあるので、今回は「ねじれた家」です。推理小説というより推理小説を自己コラージュした推理小説みたいな、今読むとちょっと変わった面白さがある。犯人とかは他のサイトとかであれに似ているとかみちゃうとすぐにわかっちゃうんだけど、最後の展開や後味の悪さがおもしろかった。やはりこういう「悪意」が欲しいのですよ。私は。

ミステリーチャンネルで録画したポワロの「五匹の子豚」や「杉の柩」もおもしろかった。やはり私はクリスティーの40年以降のものが好きである。昔読んだのは高校くらいの頃で、マープルものは10年ほど前にマイブームで再読したのだが、ポワロもそろそろ読み直そうかな。

January 21, 2009

●霧と雪

book-Innes-06.jpg 年末にこのミスとかぱらぱらみたんだけど、まったく心惹かれなかったのでもう買わない。私の読むようなミステリはその種のものにはもう載らないことが多いけど、いいんです。で、マイケル・イネスの「霧と雪」を読んだ。イネスの作品がどんどん翻訳されてうれしい。。。が、これはちょっと微妙。

最期の落ちはちょっと不満なんだけど、まあそれよりもちょっと嫌味な人々の嫌味大会と作者の悪乗りとが楽しいはずなのに、どうも訳が日本語になっていない。。。つうか英語の地口的な掛け合いの会話とか反語的なひねくれた言い回しが、どうも読み取れないのでつらい。それだけがイネス読むときの楽しみなのに。。。たぶんもとの英語でも引用含め持って回った話し方や説明のしかたなのだろうけど、もうすこしくだけてリズム的につながらないとつらすぎます。

最初に書いたとおり最後の展開が私にとって微妙なんだけど、会話が楽しめればなあと、ちと残念でした。イネスは超訳でいいよ。 いや厳しいこと書いたけど、各出版社は気にせずマイケル・イネスとグラディス・ミッチェルをどんどん訳してくれ。ついていくぞい。

December 30, 2008

●スリー・パインズ村の不思議な事件

book-threepane-01.jpg「ボアロとモース警部へのケベックからの回答!」と絶賛される本格ミステリの新シリーズ第1弾。。。というキャッチに踊らされて読み始めて、100ページまでは我慢したのだが、あまりのひどさにがまんできずにやめちゃいました。小説というにはあまりにひどすぎる。クリスティーの後継者?うそでしょ?あまりに無神経な登場人物とありえねー精神構造とセンスのない会話にうんざりです。クリスティーとは比べないでほしい。金返せ。

で、普通はこんなことはしないのだが、この後も絶対に読まない自信があったので、飛ばして解決編をみたら、あまりに最初にこうだったら怒る!と考えたままだったのであんぐりだった。読まなくて良かったよ、時間を無駄にするところだった。私は別にわかりやすいトリックや犯人だからだめというつもりはさらさらなく、それを意識しながらも登場人物や会話・設定・展開にわくわくできればそれでよいのだが、このひどさではとても無理。素人が推理小説っぽく書いてみましたってところです。登場人物もひどいが一番ひどいのは作者で二番目は訳者かな。いや、訳者はかわいそうな気もする。

「ボアロとモース警部へのケベックからの回答!」というのはケベックでは推理小説は無理!という回答なんだろうか?それともボアロとモース警部の悪いところを集めるとこうなりますということなのだろうか、と別のことを考えちゃった。

December 25, 2008

●儚い羊たちの祝宴

book-Yonezawa-07.jpg なんつうかもう単行本では買う気力がない作家も多いんだけど、米澤穂信さんのはがまんできなかったので、「儚い羊たちの祝宴」を読んでしまった。「ラスト一行の衝撃」という宣伝文句に惹かれたのもありますが、ちょっと毛色も違うようなので。。。

古典部シリーズや小市民シリーズに比べるとちょっと残酷な感じなので、好き嫌いは少々分かれるかもしれないが、短編としてはどれも良くできていると思った。まあ最後の一行でどんでん返しというよりは、最後の一行で10点着地、という感じで、単純などんでん返しの一行ではないので、「ラスト一行の満腹感」みたいな感じでしょうか。。。私は食べたくないけど。単なるパズルではなく、小説なんだというところが好きなのだ。

で、小市民シリーズも年明けにはでるような話も聴いたので、楽しみである。

December 10, 2008

●ポジオリ教授の冒険

book-Stribling-01.jpg本を読む速度低下中。。。つうか時間も取れてないし。で、すぐにくじけるんだけど、これはおもしろかった。T・S・ストリブリングの「ポジオリ教授の冒険」はポジオリ教授幻の第2期の作品集である。ポジオリ教授といえば「カリブ諸島の手がかり」「ポジオリ教授の事件簿」 が出ているけど、幻のその間の作品集というわけだ。

短編集なのだが、あの「カリブ諸島の手がかり」の衝撃の終末からのほほんと始まるのがいいなあ。で、きっちりとした本格推理でしかもなんだか一ひねり半でぜんたいのまとまりがすんごくよい。これだよ、おいらはこういう推理小説を待ってたのだ。しかし、このミスなどにはのらないのだ。うーん。皮肉な感じも含めてその完成度はばつぐんではないでしょうか。

で、大推薦なのだが、もちろん読むなら、文庫化されたことだし「カリブ諸島の手がかり」から読んでほしい。自分で「カリブ諸島の手がかり」のことを書いているので読んでみたら、この頃はまじめに書評してるじゃないか。。。しかし「【注意!】以降本書を読んでからのほうが絶対に良いです。」 と自分で書いたところを読んでも意味がわからなかった。。。ベナレス以外覚えていない。。。本当に読んだのか俺は。。。鳥頭進行中。

September 28, 2008

●蒼い月 なみだ事件簿にさようなら!

book-Kujira-02.jpg最近日本のほうの推理小説では今ひとつ読みたいものがでていない。法月綸太郎さんの作品はまあ好きなほうだが、どうも単行本で買う気になれなくなってきた。有栖川有栖さんは単行本・・・もう文庫でもあんまり買わないかも。鯨統一郎さんも単行本だと買う気にはなれないけど、ノベルスだったので買っちゃいました。

まあ軽いものを・・・と鯨統一郎さん&波田煌子はほのぼの系?と思って選んだのだったが、今までのと違って重いし暗いじゃないか。。。でもよくできているほうかと思ったし、なかなかおもしろかった。

今回もカバーは朝倉めぐみさんで、これも結構好き。

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August 15, 2008

●タナスグ湖の怪物

book-Mitchell-05.jpg東京は少し涼しいかと思えば、私が戻るのにあわせて暑いとは。。。で、本を読む気にもなれず、だらだらと読んでいますが、グラディス・ミッチェルの「タナスグ湖の怪物」を読みました。うーん、グラディス・ミッチェルを3ヶ月で2冊も読めるとは、ちょっと幸せ。

でもまあいつものごとく普通の推理小説好きの人には向かないかも。。。と書くのももういつものことかも。ブラッドリー夫人とローラとサリーの会話を楽しむシチュエーションコメディーでございます。今回のお題は「恐竜がいたら・・・」ということで。

結局誰が犯人でもよいようなかんじなんだけど、それは前に読んだ「ワトソンの選択」と近い。というか、そういう作風なんだね。この作品は1974年のもので48作目、その後も1984年までブラッドリー夫人ものは66作もあるのだ。もっと読みたーい(勿論推理小説というよりはウッドハウスのようなもんだ)。そうそう、なんかブラッドリー夫人もやさしくなってミス・マープルみたいだな。

August 10, 2008

●探偵小説のためのヴァリエイション「土剋水」

book-Mahoro-05.jpg先週末は東京往復、今週は金沢往復、次週は東京往復の予定です。もう水で冷やしてくれー水剋火、はもう前に読んでおりまして、今回は「探偵小説のためのヴァリエイション土剋水」でありますが、ぞなぞなワールド恐るべし、つぼにはまって笑いました。いいなあ、この変な世界観。

後半は一転してガチな推理なんですが、犯人が怨霊系だと本来何でもありジャンという思いが消せないので、ちょっとそういうところは私にはつらい。また、最後のパターンが全部一緒というのもどーかな。

まあ私としては気軽にぞなぞなテーマパーク本として読んでいきます。本編の天帝シリーズも続くみたいだし。でもあの後どう続くんだろ。

July 30, 2008

●道化の死

book-Marsh-05.jpg溶けると本も読んでいないのですが、ぜんぜん読んでいないわけでもなく、まあぽつぽつと囲碁の本を読んだり、考古学の本だったりするのです。さてほんの少し読んだ本では、ナイオ・マーシュの「道化の死」。男前のアレン警部・・・いやアレン警視でございます。順調に昇進しているわけですな。私のサイトでも結構書いているような気がする(意味のある内容は書いていないのだが)。

で、「道化の死」は、田舎の村で続くモリス・ダンスの演じられる中で殺されるというまさに不可能犯罪なのですが、民俗芸能とのからみがおもしろいです。また、民俗舞踊おタクのドイツのおばちゃんとかわけのわからん人物も登場して、なかなかおもしろい。でもやっぱりアレン警視登場後は尋問的な会話が続くので、そろそろなんかバリエーションもほしいところですが。

で、民俗舞踊を楽しむには飾りつけとか踊りとか、絵や図があるといいなと思ったり。また、仕方ないとはいえ、偶然性はちょっと私的には減点です。まじめな推理小説好きの人向きですね。最近の私はグラディス・ミッチェルよりである(単に壊れているだけかもしれん)。

June 15, 2008

●ワトスンの選択

book-Mitchell-04.jpg私の最近の推理小説の好みはグラディス・ミッチェルとマイクル・イネスだったりするのだが、とても本格とはいえず、推理ともいいようがなく、どちらかというと英国風冗談嫌味ひねくれ小説といったところか。でも、私には「本格」だからよいのだ。といっても翻訳が少なくて「読んだー」といえるほども読んでいないないのだが、最近翻訳が増えてきたのでうれしい。というわけで、グラディス・ミッチェルの「ワトスンの選択」を読んだ。

あいかわらずのぐだぐだぶりで、でてくるやつも変なやつばかりなのだが、なんかはずしていておもしろい。シャーロック・ホームズの登場人物に仮装してしてのパーティなど、シャーロキアンだともっと楽しめるんだろうけど、おいらはあいにくそんなに読んでないし。。。だめだめ読者だな。

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June 08, 2008

●クドリャフカの順番

book-Yonezawa-06.jpg米澤穂信の古典部シリーズは「氷菓」と「愚者のエンドロール」は読んでいたんだけど、「クドリャフカの順番」はどうもハードカバーで購入する元気が沸かず、文庫待ちであった。で、このたび文庫入りということで読んでみた。

前の2冊が文化祭前なのに対して、今回は文化祭本番、あとがきにあるように事件の話もあるけど、やはり主役は文化祭である。なんか文化祭なんて遠い昔であるが、なんだかけっという気分とそれでも興奮する部分が入り混じってホータローに感情移入できましたです。他のメンバーの、特にえるさんの部長として文集をなんとかしなきゃと思いながらいろいろな展示にひかれての迷走ぶりはすばらしいです。

事件はちょっととんちみたいなもんだけど、背景の文化祭とうまくマッチしていて、また動機もなんだかちょっとだけ苦くていいなあ。

さて、最高の登場人物はもちろんホータロー姉で、もうほとんど「神」ですね。

May 17, 2008

●クラシック・ミステリのススメ

book-ClassicMystery-01.jpgエディション・プヒプヒ発行の「クラシック・ミステリのススメ」を入手している。国書刊行会の世界探偵小説全集以来増えているハードカバーでの翻訳クラシックミステリの紹介本といいましょうか。最近やはり忙しいので、ぱらぱら見て楽しむにはよい。このBlogに載せてきているように、もちろんそれぞれのシリーズは知ってはいるけど、いい加減に購入しているので当然持っていないほうが多い。また書評というのは自分の感想と比較してうむうむとかえーっとかおもいながら読むのが楽しいです。

だいたいこのあたりのはサイコとかサスペンスとか「でない」ことが私には重要なので(もちろん一部サイコ的であったりサスペンス風味があっても本質がミステリであるということ)、次に読む作品を選ぶにもよいし、藤原編集室のインタビューもよい。最後のおすすめのホシマークは少々意見が異なるものももちろんあるんだけど、「このミス」「本ミス」よりは私向き。。。そういえばどちらも2008は買わなかったなあ。

論創社や長崎出版は下巻のようだが、グラディス・ミッチェル、マイクル・イネス、ナイオ・マーシュがもっと出るといいなあ。

April 19, 2008

●探偵小説のためのエチュード「水剋火」

book-Mahoro-04.jpgなかなか忙しくなると、週一回しか更新しなくなる。書く時間というより書くことがなくなるわけで。。。CDは順調に?増えているので、そのことを書いても良いのだけどワンパターンになりそう。。。まあCDでもマーラー関連やロマンティック協奏曲シリーズ、チェリッシュなどいろいろねたはあるんですけど。

さて、古野まほろの天帝シリーズに続いて、新シリーズのようです。「探偵小説のためのエチュード 水剋火」 はぞなぞなワールドに妄想女子高生と陰陽師女子高生のコンビが続きそうですが、普通のライトノベルかというと、やはりまほろワールド炸裂で、悪乗り具合は上かもしれないというそんな悪乗りが好きです。もっともこの悪乗り具合に乗れるのはしぼられるかも。そうそう一部化けコアラとも関連するふりもあるので、そのうち出てきちゃうのか、それとも病室で書いているのがこれなのか。

推理は本格、ということだが、まあ私はその部分はどーでもよくてまほろワールドだったのがよかった。裏では天帝シリーズも執筆中らしいのでそれもうれしい。孤島があれなので次はどうなっちゃうんだろ?

March 20, 2008

●ビーコン街の殺人

book-Scarlett-03.jpg

フローラとゴーギャンの物語が進まず、ロジャー・スカーレットの「ビーコン街の殺人」 に逃避。古さは感じるけど、堅実な感じでバントの得意な2番バッターみたいで、欧米で忘れ去られているが日本で人気があるのもわかる気がほんの少々。

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March 07, 2008

●最後の一撃

まじめな小説が進まず、ちょっと横道にそれてクイーンの「最後の一撃」を読んだ。。。つうか読み直したわけだが、あまりに忘れているのに笑っちゃうほどだ。昔は、えーっ、という感じもあったように思うが、今回読んだらトテモ面白かった。もちろんこの作品は精密な推理なんかなく、謎解きも知識がないと無理だからそういうのを楽しむのではなく、なんつうかクイーン歌舞伎を楽しむためのものだから、ここで犯人が現れて、クイーン氏が鋭利な推理をしなくても、「よっエラリイ屋!」と楽しむのが筋なのだ。

なんかいろいろ読んで一回りしてから読んで初めて楽しめるような気もする。。。が、駄作という人の気持ちもわかる。でも最近の私は中期以降が好きだ。国名シリーズ?ふーんだ。

February 15, 2008

●蓮丈那智フィールドファイル

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全集に入ったペルーの作家のあれを読み始めたのだが、ほんの最初のほうですぐ他にぶれてしまいました。北森鴻さんの本は読んだことがない。 たまたま書店で「写楽」にひかれて買ってしまったらフィールドファイル3だったので1から買い直して読んだのであった。凶笑面―触身仏―写楽・考 を一気読みですが蓮丈那智さまには萌えませんでした。

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January 31, 2008

●QED 諏訪の神霊

book-QED-09.jpgえー、あいかわらずぐだぐだと読んでいます。QEDシリーズ、今回は諏訪ですよ諏訪、行ってみたいなあ。もちろん現実事件部分はぐだぐだなのでほっといて、やはり諏訪大社と御柱祭がメイン。

確かに建御名方神(たけみなかたのかみ)や諏訪大社には謎が多いと思いますです。 ただ、今回の解釈だけではちょっと納得できないなあ。。。

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January 20, 2008

●ミステリ講座の殺人

book-Knight-01.jpgさてなぜかディスガイアにはまってしまっている上に東京での雑用もあり読書の時間が減っているのですが、クリフォード・ナイトの「ミステリ講座の殺人」を読んでみた。クリフォード・ナイトは日本ではまだ知られていないけど、アメリカの黄金期の作家で、最後に「手がかり索引」がつくあたり、デイリー=キングを思わせますなあ。

で、「手がかり索引」など完全にパズラーかしらんと思っていたが、そうでもなくて普通に面白かった。ただ推理小説で「普通に」おもしろいのはヒキがないからねえ。

まあしかし講師たるミステリ作家もあれだし登場人物たちもあれだし推理小説講座ということで展開がパロディっぽかったりメタミステリ的な楽しみ方だったので、読み方を本質からははずしているかもしれん。

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December 29, 2007

●クビキリサイクル

book-NishioIshin-01.jpgやっと年末モードです。忙しいのと咳が止まらないままなんとか休みに突入し、年明けからまた忙しさに戻るわけだが、咳がそのままだと嫌だなあ。まあ最後は仕事の問題を棚上げして、会社の同僚と自宅で囲碁対局で初心者相手に100目差の虐殺を行い、その後二人で忘年会。なかなかまったりした夜であった。

さて疲れているせいか、「ラナーク」なんか全然読めず、西尾維新を今頃読んでいる。うーん、千本中立売も歩いたぞ。「クビキリサイクル」がおもしろかったので、続けて「クビシメロマンティスト」「クビツリハイスクール」を読んだ。ということは、はまっているわけです。まだ折り返し地点前なので当分楽しめそうだ。

ライトノベルなのかもしれんけど、私の本格魂にはフィットするし、紹介文書いている清涼院流水などよりはよほどまとまっていてすべらないしプロ的である。 もっとも3作目以降は推理ものではないけれど。赤にも青にも萌え萌えです。

December 16, 2007

●ヴィンテージ・マーダー

book-Marsh-04.jpgナイオ・マーシュの「道化の死」が出てしまったので、先入先出の積読キューから「ヴィンテージ・マーダー」が押し出されてしまったので読んだ。ちなみに私の積読キューは時々先入後出になるし、すぐにオーバーフローするのでセキュリティ上の危険があります。

さて、男前アレンについては読むのは3作目ですが、今回は舞台がニュージーランドで劇場が舞台です。つうかナイオ・マーシュはニュージーランドの作家なんですね。英国推理小説の女流四天王はクリスティ・セイヤーズ・アリンガム・マーシュらしいのですが、本格推理小説っぽいのはクリスティとマーシュかな。セイヤーズは文学よりだし、アリンガムはサスペンスに近い気がする。そういうわけで私はどちらかというとクリスティ&マーシュよりが好みなのだ。

ただクリスティは謎もそうだけど解決時の衝撃というかカタルシスが大きい。。。というか、そうなるように他の要素を切り捨てているわけだ。マーシュは探偵役のアレンが警部であることもあり、尋問シーンが続いたり、つくりはよいけど謎が解けたときのインパクトがちと弱いんじゃないかな。細かく作っているし、殺人のシーンなども劇的(劇場だし)なんだけど、やはり犯人とかに動機に驚きがないのです。いや、マーシュは好きなのでどんどん出して欲しい・・・が、できたら発表順に読みたいんですけど。(イネスみたいにあちこちに飛んでいるといつの間にかアプルビイも結婚してたり子供ができたりしてるからなあ)

November 14, 2007

●悪魔はすぐそこに

book-Devine-01.jpg本を読めていません。ブレストンの時空迷宮にはいったまま停滞中。。。なので、それはおいておいて少し軽めのものに逃避する。 D・M・ディヴァインの「悪魔はすぐそこに」を読んだ。D・M・ディヴァインはどこかで聞いた名前だなあと思っていたら現代教養文庫でいくつか出ていたのだなあ、いや読んでいないけど。

で、クリスティが絶賛した技巧派 ということなんですが、まあまあおもしろかったかも。でも犯人わかっちゃうんだよね、結構早くから。なんで、2度読むべき。。。というのが、最初からそういう目で読んでしまうんで、そのあたりがいまひとつかなあ。。。まあ気分的なものもあって、犯人がわかっても楽しめる場合もあるんだけど、驚かそうとしているものだとちょっとね。こういうの慣れちゃったからかなあ。それでも大学ものはやはり変人がおおくておもしろい。洋の東西を問わず大学教授はXXXということだ。

でも、推理小説以外の要素もそれなりにはおもしろいので、他作品がでたら読んでもいいな。ただちと通俗っぽくなりすぎるきらいがあるので、体調によってはもたないかもしれない。さて、ブレストンに戻るか、他に逃避し続けるか?

October 21, 2007

●天帝の愛でたまう孤島

book-Mahoro-03.jpgえー、こんなに早くでちゃうんですかあ。。。古野まほろの「天帝の愛でたまう孤島」は、推理小説会の有閑倶楽部、まほろ一行の今回は「クローズド・サークル」ものです。で、今回は柏木君があまり登場せずに(理由はある)、女性陣総出演です。萌えー。有栖川有栖の「女王国の城」はバブルの頃の描写がとか書かれているので読む気にならず。

萌えーはよいのだが、ちと無駄な要素が減っているのが悲しい。無駄な知識の羅列と言葉の弄びが楽しいのになあ。 まあそれでもいつもの歪んだ構成は今回もいっちゃってます。でも屋敷の謎は・・・デジャブ?まあしょうがないかな。 背表紙には三部作と書かれていますが、勁草館シリーズ終わるんでしょうか?でも壊れた関係だしなあ。。。

前に読んだ米澤穂信さんの「インシテミル」といい、古野まほろの作品群といい、完全に「新古今和歌集」的な第3の波みたいな感じ。事件のリアリズム性(感覚的なものだが)と黄金期の作品群のコラージュのバランスで成立するのがこれまでの作品だとすると、これらは完全に先行する作品群が作り上げた「推理小説」という世界の中での感性の遊びなのであって、それはそれでおもしろいのであるが、結構知識を要する世界でもある。そのうち作品の解釈は一子相伝とか口伝とかの世界になったりして。

October 10, 2007

●インシテミル

book-Yonezawa-05.jpg金沢からの帰り道に読む本が終わった(クロエだ)ので急に途中の書店で調達。Beansはとても見ずらいぞ。。。しかも海外小説でマルケスからカーまでごっちゃに置かれても。。。つうかこれは他で買ったのですが。で、気楽に電車でと思って米澤穂信さんの新しいやつを買ってみたが、明るい雰囲気ではなかった。

どうも古典部シリーズや小市民シリーズのイメージから人の死なないちょっとひねくれた青春浪漫みたいなイメージだったんだけど、今回のインシテミルはミステリ度100%、青春ロマン的なところはなく、クローズドサークルでの事件です。

しかしそこはなかなか一筋縄ではいかないし、米澤穂信さんらしい寝たふり、もといネタ振りと最後の加速感はよかった。ただ、完全にいろいろな推理小説を読んでいる人向きであることは確かで、知っていることによる「違和感」自体がトリックのようになっているので要注意である。うーん、他のも読むべきかなあ。

最後の手紙が一番好きです。いやほんと。

October 08, 2007

●クロエへの挽歌

book-Allingham-02.jpgアリンガムは英国4大女流推理作家の一人といわれていますが、日本ではあんまり出版されていません。最近黄金時代の作品があいついで翻訳されている流れの中で、アリンガムの作品の翻訳も少しづつ増えてきたなという感じ。

「クロエへの挽歌」は、ミュージカルの花形スターとその周辺で起こる不穏な出来事、そしてその自宅でついに女優のクロエが死ぬのですが、、、事故死?自殺?殺人?キャンピオンがその人間関係を解き明かしていきます。。。

って書くとキャンピオン名探偵っぽいですが、なんかやはり探偵の恋愛が入っていると、「本格」ファン向けではないような気もする。どうも最後も「想定内」というか。重厚な雰囲気や書きっぷりは好きなんですが、事件自体や推理の部分は弱いんですよね。これは「霧の中の虎」でも感じたんだけど、推理小説として読んじゃだめで、推理小説風のドラマという感じですかね。。。うーん、微妙。特に今回のやり口は慣れているとすぐにわかっちゃうんで、結局キャンピオンだめだめじゃん!なんだけど、最後への盛り上げ方はうまいと思った。推理小説よりも展開やドラマ的なものを好きな人向きです。

原題が「Dancers in Mourning」です。クロエ嫌なやつなんでクロエに挽歌なんかなくてもよいですが、そういう意味では邦題もちとメロドラマ風。

September 07, 2007

●QED -flumen- 九段坂の春

book-QED-08.jpgいやあ、私もなぜかQEDだけは続くなあという感じですが、 とりあえず読んでいる。今回は連作短篇集で主な人物の若い頃の話。「QED -flumen- 九段坂の春」 は、うーん、まあ私的には歴史の謎とか民俗学的な部分は好きなんでまあまあかな、と思うが一般にはつらいかもしれん。キャラものであるのは確かなのだが、最近御名形とか 新しいキャラ登場!といってもあんまりタタルくんと変わらないしなあ。。。

事件については、私はこの程度でよいと思うのですよ。所詮事件なんてこの話を読ませるためのえさなんだから、まあどうでもよいのです。歴史ネタ・民俗ネタとしては今回はけっこう京極夏彦とかぶった領域なので、さすがにその部分では京極堂の方に分があるかなと思った。

そういえば御名形史紋クンの「毒草師」は面白いのだろうか?

August 04, 2007

●赤い右手

book-Rogers-01.jpgジョエル・タウンズリー ロジャーズつう作家は知らないんですが。。。

「赤い右手」はカルト的な作品ということで読んでみましたが、確かに怪作。いやあ読み始めてしばらくは日本の「新本格」のできの悪いやつみたいなにおいがプンプンで、おいおいと思っていたのですが、途中からはなんだか無理やりはめられました。技といえば技なんだけど、柔道で力だけで押し倒されて押さえ込まれた感じだよ。でもおもしろかったからまあいいけど。

信頼できない語り手を使ったこのトリックはなかなかおもしろい。もちろん、読み終わって冷静になれば「ありえねー」なんだけど、この脳が溶けたような語り口がまるでデヴィッド・リンチの映画の中に迷い込んだような危うさでよい。そう、これも人外系だなあ。。。いかん、いかん。

July 05, 2007

●天帝のつかわせる御矢

book-Mahoro-02.jpgというわけで「天帝のはしたなき果実」のはしたない終わり方に萌え萌えだったわたくしは続けて「天帝のつかわせる御矢」も読んだわけであります。こちらはクリスティーの列車もののパスティッシュとでもいいましょうか、しかし最後は予定調和的な大脱線(列車が、じゃないよ)、もう人外・妖狐合戦は笑い飛ばすしかない。これも大変面白かったです。しかし主人公の外道ナ感じは笑っちゃいますね。

ちょっと物足りないのは前作のメンバーの出番が少ないことですかね。 やはりライノベ的萌え萌え感では前回女性神はもっともっとほしいです。

しかし知識廃人の妄想は続く・・・という感じはよいのだが、途中にはさまれた病院の部分が、連作の最後に夢落ちを思わせて嫌だなあ。このままいっちゃっててくれるとよいのですが。

June 24, 2007

●天帝のはしたなき果実

book-Mahoro-01.jpg出社していたので東京の某演奏会にもいけません、はふう。今回の川島博さんの「バラード」は聴きたかったのう。。。でもこれは演奏したいほうか?でももう熱くはなれないかもね。

さて古野まほろの「天帝のはしたなき果実」は、合奏系クラブの暑さと甘酸っぱい感じが萌え萌えでよかった。メフィスト賞であるが、推理小説としてよりも金管萌え萌えな感じがほのぼのしてよい。保科洋とかリードとか会話が変ロ調だったり、知っていると笑えて楽しかった。が、ガジェット的にちりばめられた地口やギャグがわからんと面白くないだろうなあ。一般にはついていくの無理だろ。

で、推理小説としては結構壊れてるし、最後は行っちゃう系だけど、結構気に入っている。やはりラスボスはこれぐらいの悪意を持ってもらいたいものだす。

 

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June 02, 2007

●キングとジョーカー

book-Dickinson-01.jpgむかしむかしサンリオ文庫というのがあって、好事家しか選ばないようなSFや小説が翻訳されたのであるが、一般の人にはなんのことやらわからなかったみたいし、訳がひどいという話もあったりで、絶版。その後一部の古本屋では一部の作家の作品が高額で売られていたものである。バロウズの作品などは軽く1万円以上だったのではないだろうか?編集者が勝手な好みで選んだのか、SFに限らず現代文学でもバースの「フローティング・オペラ」やピンチョンの「競売ナンバー49の叫び」やマルケスの「エレンディラ」、カルペンティエールの「バロック協奏曲」など現代文学でよだれがでるもの、ディックやバロウズ、ディッシュなどその後カルト人気のSF群など再刊されたもの多数である。訳も実は原文がひどい(つうかやりすぎていたりする)のもあったりしたわけで、実は20年以上先を行っていたのかもしれない。

そのサンリオ文庫で出版され、その絶版後趙高値で取引されていたピーター・ディキンスンの「キングとジョーカー」が扶桑社から文庫で復刊されました。うれしすぎる。

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May 24, 2007

●首無の如き祟るもの

book-Mitsuda-03.jpgで、今度は首無が出るぞーなわけです。三津田信三さんの民俗ホラーミステリー第3弾がでておりましたので、購入して読んでみましたの。ネット上では偉く評判がよいようで、それはよいことでございますが、私のようにすこーしはずれた趣味者としては、すこーしやりすぎで、すこーしコクがないかなと思ったのでしたわ。

謎解きも凝っていますし、細部まで詰められていますが、その分民俗的な部分が希薄のような気がするのでございます。私としましては謎解きの完璧度よりは饒舌さや雰囲気も含めてのバランスがないと満足できませぬ。また外枠のメタもやりすぎというか、すこーしバランスがよろしくないというか、そのあたり微妙なものでございますなあ。このあたりが本格者と変格者の趣味の違いと申せましょうか。

また、設定がすこーし「厭魅」 と似すぎておりますかなあというところも気になるところでございます。気・に・な・るー。(関西の人にしかわからないでしょうが「気になるオセロ」風に発音してくださいませ)

(注)それぞれの「すこーし」は、本因坊秀栄が田村保寿をさして「すこーーし足りない」といったそのようなニュアンスとお考えくださいませ。

May 06, 2007

●ウォンドルズ・パーヴァの謎

book-Mitchell-03.jpgまた風邪をひいていたため(本当に風邪なのか?)、体調不良。今日の朝がしんどかったが夜には少し楽になったが、明日から働きたくない病かもしれない。休み中は映画一本観に行ったけどあとCDの買出ししかしなかったなあ。いや実はスピーカーを中古で買いました。PMCのTB2SMというやつで、ちと傷が多いので安かった。

さて、本はあいかわらず推理小説系のみ。グラディス・ミッチェルの「ウォンドルズ・パーヴァの謎」を読んだ。いや、こいつがおもしろい。事件が、、ではなくて、出てくる人々の語り口が最高である。こういう読み終わるのがもったいないのがまだまだあるんだね。グラディス・ミッチェルだけでも60冊以上未訳なわけだし。

ブラッドリー夫人あいかわらず笑える。今回の手記も最高です。

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May 03, 2007

●氷菓・愚者のエンドロール

book-Yonezawa-03.jpgbook-Yonezawa-04.jpg

米澤穂信さんの「氷菓」「愚者のエンドロール 」を読んだ。新幹線で読む程度にちょうどよい。これらは折木奉太郎の古典部シリーズである。

「氷菓」は古典部の文集と過去にまつわる話であり、ちょっとほろ苦い感じがよいが、登場人物各人の設定がまだ限定シリーズほど際立っていないので、そのあたりがくい足りないかな。

「愚者のエンドロール 」は途中となったビデオ映画の結末を探すものだが、この趣向は「探偵映画」でも読んだなあ。映画の結末ということだけなら「探偵映画」のほうがなるほど!感があったが、こちらはそれが主体ではなくもう一段上の謎?が主役。登場人物は前よりこなれているけど、全体的な苦さはちょっと物足りない。

というわけでできは「限定」シリーズのほうが良いとは思うけど、こちらが先なんだから仕方ないね。「クドリャフカの順番」も文庫で出ないかな。

April 22, 2007

●アララテのアプルビイ

book-Innes-05.jpgイネスの本を読みながら、まだグラディス・ミッチェルの「ウォンドルズ・パーヴァの謎」とマイクル・イネスの「アリントン邸の怪事件」が脇に積まれているとはなんたる私服・・・もとい至福の時間である。ヴィクトル・ペレーヴィンの「チャパーエフと空虚」もあるし、こりゃまいったね。

というわけでマイクル・イネスの「アララテのアプルビイ」であるが、もう推理小説のジャンルにいれてはいかんような気がする。頭の良い人が悪ふざけをまじめにやるとこうなるんだろうか?本文にあるとおり探偵小説というよりも冒険小説というかもちろん冗談小説ではあるのだが、でも構成をみると最後の展開についても最初のほうからうまくネタは振られているんですよね。

だいたい会話がハイブロウというよりかみ合ってないし、出てくるやつは変なやつばかりだし、うそでしょーっていう展開だし、でもそういうのを大きな気持ちで笑い飛ばせる人向きです。私も十代に読んだら「ふざけるな、金返せー」となっていたかも。さて、次は「アリントン邸の怪事件」が出てるわけですが、これって引退後だよねえ。。。できれば順番にでないかなあ。。。無理なのはわかるけどね。

April 10, 2007

●ナイン・テイラーズ

book-Sayers-02.jpgドロシー L. セイヤーズは「誰の死体?」以来でございまして、1作目から9作目に飛ぶのもどうかとは思ったんだけど、ピーター卿うざそうだから、一気に9作目にいきました。「ナイン・テイラーズ」はしかしおもしろい。鐘ですよ鐘。ラフマニノフの「鐘」でも聴きながら、と思っているうちに聴くこともなくだらだらと時間がかかってしまったです。

なんつうかうざいんだけど、9作目まできたせいかどうか、ピーター卿よりすごい人々続出で、ピーター卿が出張ってないように見えるのが笑える。特に鳴鐘法キチの牧師さん最高です。脳みそ腐ってます。村の人もみんないい味だしてます。その結果、推理小説という枠を超えて、なんだか宿命とか運命とかを感じてしまいます。最後がすごすぎる。

本来なら浅羽莢子さん追悼で東京創元社版を読むべきであるような気もするけれど、ごめん本の後ろの鳴鐘法の説明に負けて集英社となっちまいました。 これは推理小説というより英国の田舎の運命と正義の物語です。

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March 28, 2007

●QED 河童伝説

book-QED-07.jpg結局3月なんですが京都滞在延長なんで、夏ごろまでいるかな、とかもう一回祇園祭ですか、とか。疲れは溜まっている気がする。で、重い本は読めません。

高田崇文氏のQEDシリーズが出ていたので購入した。。。が遅れて読んだ。「QED 河童伝説」は河童ですが、話は一応「QED ventus 御霊将門」の続きであるらしい。というわけで、事件の人間関係も前作を読んでからのほうがよい。。。が、結局御名方や禮子、そのほかを楽しむには最初から読むしかないか。もちろん、民俗学ライノベですから推理小説ではありません。ジャンル推理小説にしてますけど、でもこちらのほうがよいと思うんだよな。

まあしかし今回は話題が将門からも離れてしまう上に、事件とタタル一行が!!!という究極の次は使えない技になっているんで、どうするんでしょ。まあ、息抜きに読むので良いのですが、こんなだしかたなら ventus と本編は接近させて1ヶ月くらいで刊行して欲しいです。すべて忘れています。 また、謎が昔ほど魅力的じゃないよね、というのもある。

March 22, 2007

●殺人者は21番地に住む

book-Steeman-01.jpgあー、祝日もなく働いておりますが、出しておきたいネタが溜まっております。

で、昔のものをということで、「殺人者は21番地に住む」S=A・ステーマン を読みました。おー、おもしろいじゃん。そう、こういうのが本格なんだよお。というわけでステーマンは「ウェンズ氏の切り札」しか読んでなかったように思うがどうだったか全然覚えていない。

霧のロンドンで頻発する殺人事件、犯人は21番地に住むらしいのだが、そこは素人下宿でいろいろな人が住んでいます。さて、犯人は。。。展開も含めてなかなかおもしろいです。その後の展開も含めてきちんと考えられていてよい。また二度の読者への挑戦の遊びもありますが、良いのは各容疑者の個性が立っているので、ちゃんと感情移入できるんですね。(前に書いたやつは犯人の名前がわかっても区別つかなかったからなあ。。。)

やはり黄金期ものはおもしろい。。。けど、高田崇史の「QED 河童伝説」も買っちゃったんだよなあ(実は読んじゃったので次に紹介予定)。

March 20, 2007

●日々是型本格(海外編)

で、海外編も書いてみる。こうしてあげてみると、緻密な推理よりは雰囲気というか全体としての一体感を重視しているような気がする。まあこんな好みを元にいつも好きなこと書いてるわけです。

とりあえず、犯人に意思がないのは嫌だ。推理小説の中くらいは犯人は強い悪意と犯罪への美意識を持っていただきたい。偶然の固まりも嫌だ。

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March 13, 2007

●日々是型本格(日本編)

ちょっと「本格」とかかっこよく書きすぎたので、自分の思う理想の本格をあげてみようと思ったら「変格」っぽかった。すんません。ただ、私の好みはこういうやつなので、私の書く内容はそれを加味して判断していただきたいです。まずは日本編。 もちろん読んでないのも多いし、そのうち気分で変わるのもあるかもしれませぬ。

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March 10, 2007

●乱鴉の島

book-Arisugawa-01.jpgあー、有栖川有栖さんのはね。。。火村シリーズはね。。。私、全然かってないんですよ。これが本格だといわれるとね、なんだか悲しい。が、本ミス1位だったのでさすがに少しはやるのかと思って読んでみたがこれはひどい。

飾り文句はね。「絶海の孤島、隠遁する作家。謎のIT長者、奇怪な殺人事件、精緻なロジック、エレガントかつアクロバティックな結末、ミステリの醍醐味」 とありますが、奇怪でもなんでもないし、事件もしょぼいし、推理もしょぼいし、全部偶然だし、アクロバティックじゃないし、動機もひどいし、雰囲気はないし、書いてるそばから自らぶち壊してるし、もう本当に Nevermore ですよ。一応最後になにかあるのかと思ったらなんにもないし、なんじゃらほい。まあ作家責めるよりこれを1位に選んでしまうほうがもっとひどいな。どこか良いところを探すと・・・装丁だけはかっこよいと思う。。。

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March 06, 2007

●ネジ式ザゼツキー

book-ShimadaSouji-01.jpg続いて、本ミスにあったここ10年の順位の中から島田荘司氏の「ネジ式ザゼツキー」を選んでみました。

そういえば、 島田荘司氏の作品読むのは久しぶり。昔は「占星術殺人事件」に始まって、けっこう読んだんだけど、「暗闇坂の人喰いの木」はけっこうおもしろかったが、綾辻行人の×××と×××。。。で、「水晶のピラミッド」はテキストの意味のなさが許せーん、「眩暈」は再び辻行人の×××と×××で、その後なぜか唐突に「龍臥亭事件」は読んだが、まあね、という感じで。「アトポス」は買ったけど読む気にならず。おいらはレオナものが嫌いなんだなと思う。

で、「ネジ式ザゼツキー」は島田氏によくある冒頭テキストとその解読だが、なかなかおもしろかった。テキスト解読に加えてその後もけっこう展開がおもしろかったのである。まあ無茶なのは昔からなんで仕方ないんですが。、異テキストものでは「水晶のピラミッド」は論外、「眩暈」はまあまあだが今回は本当におもしろかったぞ。

レオナがでてこないのが一番良いのか?まあいつの間にか御手洗はヒューマニスティックになっちまったのか。とにかく他のもまた読んでみようかなと思った。

February 07, 2007

●夏期限定トロピカルパフェ事件

book-Yonezawa-02.jpg続いて米澤穂信さんの「夏期限定トロピカルパフェ事件」を読みました。春期限定は連作短編だけど、夏期限定は長編のざく切り短編集みたいな感じかな。二人の性格がよりいっそう事件にからんでよかったです。最後はちょっと切ないけど、なんか成長した気分でよいね。

ちょっと身近な事件にしては大きい気もしますが、なかなか「小佐内スイーツセレクション・夏」 にはやられました。京都で和菓子版を作ってみるか。米澤穂信さんの他のも読もうかな。。。読書軟弱化傾向増大中。

January 31, 2007

●春期限定いちごタルト事件

book-Yonezawa-01.jpgどんどんライトなほうに流れているかも。米澤穂信さんの「春期限定いちごタルト事件」を読みました。ええ、小市民萌え。「夏期限定トロピカルパフェ事件」が本ミス4位なので読もうと思ったが、やはり春期限定からでしょう。

で、雰囲気はライトノベルなんですが、なかなかどうしてよくできているなあ、と。北村薫さんの円紫さんと私シリーズのイメージが浮かんだ。考えると小市民を目指していたり設定とかは大きく違うんだけど、構成がしっかりした短編集だなあと感じたことや、ネタが身の回りのことであること、そして大きな点はビルドゥングストーリーとしての視点が似ているところがあるのかな。でも久々におもしろかったし続けて読みたいと思った。

で、殺人もないし小ネタなんだけど、小鳩君のキャラクターもあってなかなか読ませてくれます。しかも最後のほうは小山内さんの一発もあって連作短編としての全体の構成もちょうど良いと思う。。。うーん、夏期限定が楽しみ。。。つうか読んじゃいましたけど。これは次回に。

January 27, 2007

●オックスフォード連続殺人

book-Martinez -01.jpg最近ぬるんで純文学っぽいのは読んでいない。今回も「本ミス」で評価の高かったものから趣味にあいそうなものとして、 「オックスフォード連続殺人」を。ギジェルモ・マルティネス、、、知らんです。「殺人予告、暗号、数学論議、迸る知的興奮。アルゼンチン発驚愕の超論理ミステリー」というのにひかれたんだが、確かにゲーデルなどはいっておもしろかった。どちらかというと不確定性理論・・つうかクイーンの後期問題に近い気もするけど。

で、読むと解説にあるように「?」「?」「?」。いや内容がわかんないわけじゃなくて、これってまさか。。。で、その後に解説を読んでなるほどと思った。完成度はこちらのほうが高いような気がするので「?」の意味がわからずに、これを最初に読む人がちょっとうらやましいね。

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January 18, 2007

●凶鳥の如き忌むもの

book-Mitsuda-02.jpg「厭魅の如き憑くもの」に続いて三津田信三さんの「凶鳥の如き忌むもの」を読む。今回は鳥ですよ。鳥。民俗ホラーと推理小説の融合つうところだろうが、おもしろいといえばおもしろいんだけど不満も少々。

よい点といえば、いろいろなギミックや謎がうまくまとまるところであろうか?ちょっと気になる点は人間関係的な構図が「厭魅」とあんまり変わらないよねえ、というところ。悪く言えばワンパターンか。また、凝った舞台設定だが悲しいかな言葉での説明でイメージするのは難しすぎる。人間消失とか密室はその構造が大きなものをいうだけに言葉ではなかなか難しいところである。

話の最後は、これだったら嫌だなあと思っていたらそうだったので嫌だなあ。またトリックについてちょっと似た感じで高木彬光氏の神津恭介で読んだことがあるので、それほど感動はなし。ただよくできているとは思うし、雰囲気は良いので土俗ホラーっぽいのが好きな人には良いだろう。

January 02, 2007

●証拠は語る

book-Innes-04.jpgあけましておめでとうございます。掃除しなきゃ、なんですが気力もなくだらだらしています。今年の目標・・・なし。

さて、前回なんだかんだ書きましたが相変わらず推理小説読んでます。マイクル・イネス(この本ではマイケル・イネスですが)の「証拠は語る」。長崎出版・・・知らないですが、こちらも推理小説が続けて出るのでしょうか?だいたい大学の教授が隕石で死ぬ・・・あたりからもう変である。まあそれよりもその後出てくる大学教授がまた変人ぞろいで、ほとんど動物園なんですが、考えると私が経験した大学教授もそんなもんか。

妄想爆裂的な可能性と最後の収束具合は結構好きなんですが、ちと偶然性の部分が私の好みじゃないのと翻訳が少し硬いかなあというところで、星3.5です。引用も多いし持って回った言い方だし、訳は難しいなと思うんですけど。

まあ推理よりは大学教授の変人具合とアプルブイのいやみさ加減、収束のうまさを楽しむ感じですかね。真相には最後まで振り回されましたので脱帽。とくとくと推理を解説したりしないところがよいね。

December 22, 2006

●厭魅の如き憑くもの

book-Mitsuda-01.jpg「本ミス」をみて三津田信三さんの「厭魅の如き憑くもの」 は私の趣味にあうかもしれん。。。と思い購入して読んでみようと。でもなかなか見つけることができずに苦労したぞい。うーむ、カカシさま恐るべし。 厭魅(まじもの)・・・でも厭魅がでた気分にはなれないなあ。そのあたりが弱いかも。

なかなかよい雰囲気で進んでいったけど、最後は、うーん、ちょっと物足りないかも。雰囲気ものりもよかったんで最後も一気に読んだんだけど、一息ついて考えると、最後はなんか一番思っていた通りなのでがっくり。また、一番最後も、これをやるならもっと破壊力をもって、強力に宙ぶらりん状態にしてくれないと、嫌だ。最後に実はもう一回入れ替わっているとかあるのかなあとか思っていたのに、あんまり起こらずに終わっちまった。

民俗学部分もまあそれなりにおもしろいんだけど、白黒の話は結局良く考えると事件の本質には関係ないような気がするし。でも凶鳥も読んでみようかと思う。

December 09, 2006

●この本格ミス2007+このミス2007

book-honmis-2007.jpgbook-konomis-2007.jpg

今年も買いましたー。なんか選ばれ方の差が大きくて、おんなじ「ミステリ」という言葉でいいんかい?つう気もします。個人的には「本格ミステリ」のほうが好きで、「このミス」はジャンル広すぎてほとんど読みたいものがない。

で、中では三津田信三さんの「厭魅の如き憑くもの」など好みに近いかも。読んでみたいと思う。

各社のねたでは最近イネスが2冊続けて出ているので、まず購入する予定。あと河出のシリーズでグラディス・ミッチェルも待ってるよー。原書房ではバークリーの Panic Party が・・・本当に出る?国書ではマーシュが春みたいなのでうれしい。「ラナーク」はやっぱり今年は出なかったなあ。。。来年はでるのかなあ。。。ビオイ=カサーレスの短編集も待ってるよん。

December 03, 2006

●降霊会の怪事件

book-Lovesey-01.jpg前のフィリップ・マクドナルドでちとがっくりきたので、もうちょっと(自分として)推理小説っぽいものを、ということで、なぜかピーター・ラヴゼイの「降霊会の怪事件」となってしまいました。なぜに。ラヴゼイも読むのはずいぶん久々だなあ。。。

それはさておき、不満分を解消して、やっと一息ついたよー。ヴィクトリア朝ものなんですが、プロットといい、クリッブ部長刑事とサッカレイ巡査のコンビといい、トリックといい、犯人像といいなかなか良い雰囲気でございました。つうか客観的にあるべきところにおちつく解決が良いなあ。まあ事件自体の構成はちょっと危ういところもあるけど、これはプロット上しょうがないかな、というわけで星3.5でございます。

クリッブ部長刑事&サッカレイ巡査ものはもう少し読みたい気になってきたのであった。

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November 27, 2006

●鑢(やすり)

book-MacDonald-03.jpgフィリップ・マクドナルドは黄金期の推理小説作家で、前に「フライアーズ・パードン館の謎」と「迷路」を読んで、うーん・・・微妙つうか・・・だったんだけど、いかんいかんやはり代表作を読んで評価せねば、ということで、久々に復刊された「鑢(やすり)」を読んだのですが・・・うーん・・・。 がまんして最後のほうまでいって、最後に少しはなんかあるだろうと思ったらなんにもなく・・・久々に壁にぶつけたくなりました。

まあ年代を考えるにしてもちょっとこれは私にはいただけません。そう、できの悪い新本格と同じ構造ですね。論理的といいながら感性で「この人間は犯人じゃない!」と思い込みまくるし、探偵しながら関係者にいろいり漏らしまくるし、あとから証言かわりまくるし、どこがフェアなのやらもうだらだらですね。パロディとすれば笑えるけど、それにしては品がないので星ひとつ。

なんつうか、トリックはまあ少し良くても、それを生かす設定もプロットもなんにもできないのね。でもこれが推理小説としては許されるらしい。まあ普通の小説と違うことはわかるけど、これならパズル本読んでたほうが良いように思われ。長いこと復刊されなかったのも納得してみたり。つうか危ないと思いながら読んだおいらが悪かったよ。

November 20, 2006

●ストッププレス

book-Innes-03.jpgだんだん文学より音楽寄りになっている予感。まあなんつうかバイオリズムのように文学よりのときと音楽よりのときがあるわけで、少々音楽寄りに傾いてきています。クラシックCDの話もあるけど、「日々是音楽」的話題も復活させたいと考えている今日この頃。

で、最近読んでいないのですが、やっとマイクル・イネスの「ストッププレス」を読みました。イネス畢生の大作というだけあって・・・つうか全編冗談なんですけど。でもイギリス的ブラックジョークの世界というか皮肉っぽいののせいくらべみたいな変な世界でおもしろい。アプルビイもけっこう嫌味なやつだし。というわけで星4.5.最後の0.5はちょっと長いこと。

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November 01, 2006

●10ドルだって大金だ

book-JackRitchie-02.jpgジャック・リッチーの「クライム・マシン」が大ヒットですが、晶文社ミステリシリーズはこれで終了。。。で、場所?を替えて河出書房新社でKAWADE MYSTERYとして登場です。ちなみにわたしゃ今年読んだのですが。で、第二弾の「10ドルだって大金だ」もとってもおもしろい。とってもカロリーオフ。短編集なので、ほんの合間に読んでもぐひゃぐひゃ笑えるのである。このちょっとひねくれた感じがたまらんとです。「クライム・マシン」は私の上半期のベストにも入っておりますんで、同じ年に読むのはちょっともったいないか?

大体最初のものからして、人をくったというか読者の予想を見越して反対の落ちをつけるというか、けっこうあぜんとしますね。犯罪的なものも多いんだけど、その落とし度合いとクールさでからっとした感じであります。

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October 22, 2006

●QED ventus 御霊将門

book-QED-06.jpg京都に遊びに来ている家族引き連れて昨日はおばんざいの店へ、本日は嵯峨野へ。ほとんど前にいったところと同じになりました。紅葉にはまだまだ早いけど、ほんの少し色づき始めた気分も。老松でわらび餅も食べたので満足ですが、常寂光寺で疲れたす。

さて、高田崇文のQEDの新刊が出ていたので読んだ。今回の主題は一転関東へ、将門怨霊説が主題となっています。 なかなか関東でもいろいろ回りたいと思っているのだが、なかなか歴史的にそこまでたどりつかない(やっと飛鳥時代あたりだなあ)。さて、今回は「ventus」 のシリーズなので、タタルくんと奈々ちゃん沙織ちゃんの将門めぐりです。Amazonの感想に、「事件がしょぼい」とかあるけど、「ventus」 のシリーズは事件なんてないんだってば。

将門の話は、ちょうど神社めぐりで祭神など見ているのでわかるけど、みんなわかるのかなあとちょっと考えちゃいますね。昔の神様の半紙はそれで謎が深いんだけど、神仏習合のしくみがまたよくわからないので、まだまだ勉強しなきゃだな。地図がついいていてうれしいんだけど、書いてある鹿島神宮、香取神宮まで行くのかと思いきやその手前で終わったのでちと不満。いま藤原氏の神がなぜ鹿島神宮、香取神宮なのかが私の謎であるのだ。鹿島神宮、香取神宮は行ってみたいと思います。

October 09, 2006

●邪魅の雫

book-Kuogoku-02.jpg京極夏彦の京極堂シリーズ本編が久々に登場です。ちょうど3年前にこのBlogを書き始めた頃に、ひとつ前の「陰摩羅鬼の瑕」を読んだらしい。こういうのは書いていると記録に残ってよいね。

さて、前回の「陰摩羅鬼の瑕」は凝縮したというか、やはり物足りない感じだったけど、今回の「邪魅の雫」はなかなか事件が拡散していてよろしい。やはりこうでなくては、登場人物の多さに対応できないだろうと思う。相変わらず「何が起こっているのか」型ではあるが、うまくはまっているし、中で「書評なんて何の意味もない」と言い切ってくれているので、心地よく好きに書くことができる。で、今回は好みのタイプなので星4つ。また、今回は旧作品の簡単な関係や解説が別冊でついており、これはすばらしいと思う。

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September 25, 2006

●猫の手

book-Scarlett-02.jpgbook-Ranpo-01.jpg

なんだかきちんとした推理小説が読みたくなったので、ロジャー・スカーレットの「猫の手」を読んだ。うーん、これだよ、これ。館ものはこうでなくてはいかん。隠れ通路などではなく、数十年も堆積した歪んだ世界とそこで醸造される歪んだ動機が、味なのである。 で、「猫の手」では古い屋敷に住む老富豪と、彼の財産を頼りに生活している甥・姪たちがいい味出してます。 こうでなくてはいかん。大技はありませんがなかなか決まっているぜー、というわけで星4つ。

で、うれしくなってつづけて江戸川乱歩の「三角館の恐怖」を。これはスカーレット続きなわけですが、これもなかなかおもしろかったっす。こちらのほうが乱歩が惚れ込んだだけあってさすがに凝っている気がするし、乱歩の書き方がおもしろいけど、この手のおどろおどろしさは今の私の好みではない。が、うまく翻案していることもあって最後まであれやこれやだまされたのでこちらは星3.5ということで。元の「エンジェル家の殺人」も入手すべきかのう?

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August 20, 2006

●裁かれる花園

book-Tey-04.jpgジョセフィン・テイ を続けて読んでいる。昔はほとんど「時の娘」しか読めなかったけど、今は全作品(といっても8冊ですが)が邦訳で読むことができるとはよい時代になったのう。これも論創社さまとハヤカワさまのおかげです。 私はこれでやっと 5/8 テイ。もう3冊で在庫が尽きるかと思うとちょっと悲しい(あ、「時の娘」は読み直すつもりだから4冊か)。

さて、「裁かれる花園」はグラント警部ものではなく心理学者ルーシー・ピムが主人公となっています。確かに設定上グラント警部では無理だわな。まあ無理に顔出したりしないところにも好感がもてます。 アマゾンの評などで「アンフェアかも・・・」とか書かれていますが、この小説は謎解きではなくましてパズル小説ではないので、アンフェアとかいう類の人は読まない方がよいでしょう。どちらかというと学園心理小説で展開を楽しむみたいな感じだし、心理学を茶化した本みたいに思った方が良いと思う。というわけで、ミステリとして読むなよ、というのも入れて星3.5。

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July 30, 2006

●月館の殺人

comic-tsukidate-01.jpgcomic-tsukidate-02.jpg

綾辻さんの作品とはさようならーのはずだったんですが、漫画仕立てなので読んでみました。感想は・・・うーん、微妙。でも最近の彼の小説よりは良いもしれない。でもちょっとやはりものたりないかもしれない。

「びっくり館の殺人」は読まないと思います。
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July 02, 2006

●悪魔に食われろ青尾蠅

book-Bardin-03.jpgもう半年が終わるのは早いなあ。今年の上半期はあんまり読めなかった。某所での上半期リストどうしようかなあ。。。

続けてジョン・フランクリン バーディンの3作目、「悪魔に食われろ青尾蠅」を読む。もちろん推理小説というよりは、サイコ・スリラーなのであって、その不安感を描く書きっぷりが良い。。。のだが、私としては、まとまっている部分がもう少し壊れて欲しくて、壊れている部分にもうほんの少しだけまとめて欲しかった感じなんだけど、そういうのは今のよくあるサイコ・スリラーになれちゃったせいかもしれん。なんせ1940年代のものですからねえ。でも、いま新本格ものとしてでても、違和感なくうまく書けてるなあ、となってしまいそう。

というのは、昔の男の出し方とか構成の話なんだけど、ちょっと前評判で期待しすぎたのか、感動しまくるまでいかなかったので3.5点、に加えて音楽的な話が面白かったのと、時代も考慮して+0.5ということで、星4つということです。(5点満点でございます)

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June 27, 2006

●絹靴下殺人事件

book-berkeley-06.jpgアントニー・バークリーの翻訳されたものとしては、私の読んでいない最後のものだ。これでシェリンガム君とも当面さよならかと思うと悲しいぞ。もっともフランシス・アイルズ名義のものはまったく読んでおらんが。で、「絹靴下殺人事件」は「ヴェインの謎」に続く作品なのだが、ま、できることならそちらから読んだほうがモーズビー警部との位置や関係などがわかってよろしい。

バークリーにしてはまともに推理小説しているので、一応単独で読んでもおもしろいし、シェリンガム君の位置づけも成立するのだが(他の本はことによる単独で読むとシェリンガムって何???この本は何???と疑問符だらけになるであろうから)、その分とっぱずれた、すなわち私がバークリーに望んでいる部分は少々薄いのであった。というわけで差し引き星3.5ということで。普通に楽しめます。

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June 09, 2006

●誰の死体?

book-Sayers-01.jpgアリンガムの「霧の中の虎」のときに書いたように、挫折していたんだけど、なんか読み終えちゃいました。ドロシー・L. セイヤーズはクリスティーと比較し称されるようですが、読んだことがなかった。私が推理小説にはまっていた第一期は中学~高校で、その頃セイヤーズなんて手にはいんなかったよなあ。やはりそういう刷り込みは大きいかもしれない。その後新本格とかも読んだけど、やはり黄金期のものが面白いし、イギリスのもののほうがひねくれていてよいのです。

で、ピーター卿うざいので一回は挫折したんだけど、その後つらつらと読んでいくとおもしろくなってきた。事件というかトリック自体はちと古い気もするが考えてみると1920年代の作品なのである。その頃で比較するとクリスティーよりはよほど完成度が高い気もするのだ。「誰の死体? 」は星3.5ということで。

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June 05, 2006

●ロウソクのために一シリングを

book-Tey-03.jpgジョセフィン・テイはマイブーム。前から書いているけど、推理小説としてではなくグラント警部の心理小説としておもしろいのと、テイ女史(と書きたくなる)の適度な皮肉と気の利いたせりふ、イギリス的なというかスコットランドよりなのかちょっとひねくれた感じの醒めた見方が楽しいのだ。「ロウソクのために一シリングを」はヒッチコックの「第3逃亡者」の原作らしいけど、映画は相当原作と違うらしい。でも読んでみてそれが正解なんだろうなあと思う。

しかしテイ女史のものは本当に一筋縄ではいかない。事件とその推理と結果だけから見るとなんじゃこりゃ、どちらかというと松本清張的な刑事小説に近いんだけど、醒めた皮肉な感じが良い。そう事件のプロットやその展開も後から思うと皮肉が利いているんだよね。そういう意味ではすでにアンチ推理小説というかメタ推理小説的なんだす。登場人物がおもしろいのもいいなあ。警察署長の娘のエリカさん萌えです。きっと半世紀後にはミス・マープルのようになれるでしょう。というわけで星4つ、だけど、普通の推理小説は期待しないでください。

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May 31, 2006

●殺意のシナリオ

book-Bardin-02.jpg続いてジョン・フランクリン バーディンの第2作目、「殺意のシナリオ」を読んだ。主役ではないが、前作に登場していた人間も登場しているので、「死を呼ぶペルシュロン」から読んでよかった。で、相変わらず危ない感じなんだけど、そうはいっても第1作よりはまともに思える。。。が、まともななのが良いかというと、バーディンはまともでないところがよいわけで、前作ほどには惹かれなかった。まあこういう設定が新本格などで量産されたせいかもしれないが、やはり小人とか馬とかが悪夢の世界を作っていた前作に比べると、ちょっと普通なので星3.5としておこう。でもやはり話はけっこうひきこまれるのであった。探偵役は不満で、今回の感想はこれだけ。

May 28, 2006

●死を呼ぶペルシュロン

book-Bardin-01.jpg競馬ではダービーの季節でありますが、もはや競馬からも離れること数年、まだやっていたらBlogは馬で埋まっていたかも。で、いい加減なのでペルシュロン種なんて知りませんです。ジョン・フランクリン・バーディンでは「死を呼ぶペルシュロン」と第3作の「悪魔に食われろ青尾蝿」は積んであったんですが、これも京都で第2作の「殺意のシナリオ」を発見・購入したので、そりゃデビュー作から読んでみましょう。

「死を呼ぶペルシュロン」はジョン・フランクリン・バーディンのデビュー作とのことですが、はっきりいって異常、ミステリというよりは心理サスペンスなんですが、もう出だしから変な人々、奇妙な小人、殺人の場に馬とデヴィット・リンチそのものじゃん、って感じ。。。だけど、こちらのほうが1946年出版なんですね。これはおもしろい!ので星4つ。

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April 30, 2006

●蜂の巣にキス

book-Carroll-01.jpgジョナサン・キャロルはなんていったらいいか、一発芸を長編でやる珍しい人で、昔はそのアイデアでおもしろいものもあったんだけど、最近翻訳されてなかったんですよね。で、久々に新訳、「蜂の巣にキス」を読んだんですが、私はちょっと、、、というか全然だめでした。どうも「自分が大切、自分は素敵、自分はえらい」型のものは大嫌いで、久々に読んでいて最後まで不愉快で、イーガン以来の体験です。私はキャロルを究極のアマチュア作家だと思っていて、書く技術最低、アイデアがおもしろい、だったんですが、今回はアイデアも何もなく最低(私にとってね)だけが残ってしまったようです。それにしても引き出しが少ないなあ。。。星1つ。

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April 23, 2006

●霧の中の虎

book-Allingham-01.jpgタイガータイガーじれっタイガー。マージェリー・アリンガムはクリスティー、セイヤーズ、マーシュとあわせて英国女流推理作家の四天王であるらしい。。。のだが、セイヤーズ、アリンガムは全然読んでいないのでこれはいかんとセイヤーズの「誰の死体?」から読み始めたんだけど、挫折っぽい。。。ウィムジー卿うざい。アリンガムもこの「霧の中の虎」で初めて読んだんだけど、どうだろう?ちょっと推理小説というよりはサスペンスなわけで、僕の求めているものとは違うかもしれない。

どうもサスペンスといういうやつは偶然性があまりにも多く、しかも本の場合は食い入るように読んで、ゆっくり考えるとそんな馬鹿なーと思う部分を筆力で乗り越えなければいけないのだ。が、ゆっくり自分の時間で読むタイプの私にはサスペンス自体が向かないのかもしれない。間おいて読んでいるうちに、偶然過ぎー、こんな行動しないだろう?とかいうのは興ざめである。いや、よくできているほうだと思うんだけど、まあ自分的には星3つで。乱歩が評価しなかったのも判る気がする。もちろんそれがすべてというわけではないけど。

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April 12, 2006

●列のなかの男

book-Tey-02.jpg自分の読書録を見直してみると、今年はSFと推理小説ばっかり読んでるなあとわれながら呆れる。呆れるがまだまだ溜まっているので仕方ないのだ。特に論創社からは毎月3冊も出てくるので、好みによって選ぶにしてもそれでも溜まっていくのです。ジョセフィン・テイは前にも書いたとおり「時の娘」は前から読んでいたんだけど、「歌う砂」ではまった。で、ほかの本も集めたので読もうかと思っていたんだけど、グラント警部の最初の事件である「列のなかの男」が出るということで、それなら最初からいこうと思ったのである。

で、最初はあんまりおもしろくないかなあと思ったりしてたのですが、途中からやはり引き込まれてしまった。どうもテイの作品は普通の推理小説って思って読むとはずしかねない。これは事件を楽しむ小説ではなく、事件をグラント警部がどう思ったかを楽しむ小説なのである。もう犯人を追いながら、休暇をとらなくては、釣りだ、と考え続けているところがおもしろい。事件そのものは、、、最後は、これでいいのか?というアンチ推理小説でありながら成立しているのは、やはり主体が事件ではなくグラント警部の内面だからなのだろう。したがってグラント警部の内面にうまくあわせられないと全然面白くないと思う。というわけで星 3.5 でも好事家には推薦しておきたい。事件自体が・・・ちょっとね。でもハイランドへの追跡は面白いぞ。

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April 08, 2006

●死の序曲

book-Marsh-03.jpgさて、マンドリン系の人に質問ですが、「死の序曲」とはどの曲でしょう?劇的序曲?うんにゃ。マネンテでもファルボでも帰山栄治でも吉水秀徳でもなく、実は E.ネヴィンの「ヴェニスの一日」なのであります。うっひゃあ。

ナイオ・マーシュの「死の序曲」を読んだのですが、マーシュは3冊目だけど、おもしろい!ぼくはマーシュ好きかも。「死の序曲」は典型的なカントリーもので、地方の貴族の一家、牧師と娘、オールドミスの老猫×2、医者、怪しい女性、などのいろんな怪しい人間関係の中で、教会のピアノを買い換えるための基金募集の芝居が行われようとしています。その序曲としてのピアノ演奏が始まった瞬間、ピアノの中から轟然たる銃声が。。。その曲がラフマニノフの「嬰ハ短調序曲」とネヴィンの「ヴェニスの一日」(作中では「ヴェニスの組曲」)なんですよ。単に曲名ではなくて、けっこう性格に絡んで出てくるので笑える。とともに男前のアレン警部けっこう好きだし、人間模様も面白く、何しろ各シーンが印象的なのはマーシュが演劇畑のということもあるかもしれません。地味といえば地味な事件なんだけどカントリーものだからしかたないか。で、★4.0 なんだけど、「ヴェニスの一日」分も少々加味されているかも。

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March 19, 2006

●ロジャー・シェリンガムとヴェインの謎

book-berkeley-05.jpg別に晶文社ミステリを選んで読んでいるわけじゃないけど、部屋を片付けているうちに途中で挫折していたアントニー・バークリーの「ロジャー・シェリンガムとヴェインの謎」を発見し、最初から読み直して読了。途中でわかっちゃう部分もあるんだけど、あいかわらずシェリンガム君がやってくれるのでよし。今回からモーズビー警部も登場するのでこれもよし。

で、1920年代の作品ではあるが、すでにアンチ推理小説の気分があってそれもよし。構成的にはもう少し古典の某作品に似てるなあ。で、面白くて個人的には好きなんだけど、作品の出来としてはまあ星3.5ということで。でも十分楽しめるよ。さてあとは「絹靴下殺人事件」を読めば、バークリーで訳されているのは大体読んだことになるかな。次はフランシス・アイルズ名義か(全然読んでねー)。

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March 07, 2006

●クライム・マシン

book-CrimeMachine.jpg晶文社ミステリ終了ということで買ってあった「クライム・マシン」を読んだ。ジャック・リッチー知りませんが、甘ったるいと嫌だなーと思っていたら、カカオ分90%くらいの苦さであったので良かった。どうもスタージョンとかデヴィットソンは一部合成甘味料のような甘さを感じて、そういうところが嫌いなんだけど、リッチーのはそういう部分のカロリーオフ、大人の短編であった。推理小説ということではないので、クライムストーリーというのが適切なのだろうか?というわけで星4つ。

で、「このミステリーがすごい!2006」でも海外部門1位だったわけで、かといって売れているのかどうかは知らないけど、やはり晶文社ミステリ終わってほしくないなあ。

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March 02, 2006

●晶文社ミステリの終了

「晶文社ミステリ」は昨秋刊行の「クライム・マシン」をもって終了だそうで。

うーん、とちとうなっちゃいますが、中ではバークリーありがたかったよなあ、グラディス・ミッチェルも買ったなあ、「プリーストリー氏の問題」もおもあしろかったなあ、去年の暮れに読んだペルッツははまりまくったよなあ、「クライム・マシン」とか「壜の中の手記」とか「絹靴下殺人事件」とかまだまだ積んであるんだよなあ。。。

「このミス2006」で、晶文社の隠し玉にマイケル・イネスとグラディス・ミッチェルがあって、手を上げて踊っちゃったんだけどおろしどころがなくなっちゃったなあ。まあ出版物も多いし、ハードカバーは高いし、小説なんて読まない人は読まないし、読む人は何の引け目もなく図書館で借りたりだしなあ。。。

どこか他社でも企画が続くことを祈るのみです。マイケル・イネスとグラディス・ミッチェル!

February 05, 2006

●間違いの悲劇

book-queen-03.jpgエラリー・クイーンの最後の聖典・・・というほどクイーンに心酔しているわけではないのですが、最後の梗概とかにも興味があったので読んでみた。「間違いの悲劇」(The Tragedy of the Errors)は最後の長編である「心地よく秘密めいた場所」の次回作にあたる長編のためにダネイさんが用意したものです。なるほどシノプシス(梗概)とはこういうものかと勉強になった。内容は後期のクイーンらしいなあ。。。まあこれはそれなりにファンならば読んでも良い。が、同時に入ったほかの短編は単なるなぞなぞ程度なので、もしクイーン以外の作者の短編として読めば壁に投げつけているかもしれない。というわけで、星2つで。ファン以外には推薦はとてもできませぬ。。。でも「最後の一撃」が読みたくなったなあ。

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January 27, 2006

●英国風の殺人

book-Hare-01.jpg国書刊行会のシリーズから。今頃という感じはあるが、シリル・ヘアーの「英国風の殺人」を読んだ。なるほどー、シリル・ヘアーも読もう、と思った。館モノといいますか嵐の山荘ものといいますか、定番の型ではありますが、この殺人は「英国風」であること。タイトルだけだと「英国式庭園殺人事件」を思い出しますなあ。LDで持ってるけど、DVD で買いなおしたいなあ。。。けどボックスで高いなあ。タイトル以外全然関係ないなあ。

話が脱線しましたが、ここでの探偵役はシリーズ物ではなく外国人のボトウィンク博士で、ちょっとポワロ風ですね。殺人のほうは、雪の山荘モノなので科学的な捜査は行えず、状況的なものではありますが、さてここでこの殺人が「英国的」なのはなぜでしょう。その理由が納得がいくかでちょっと評価はわかれるかもしれん。私は許せるほうで、星3.5です。英国風なシニカル?な感じのユーモアが好きなのだ。というわけでシリル・ヘアーも集めますぜ。

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January 24, 2006

●QED 神器封殺

book-QED-05.jpg高田崇史の「QED」シリーズの新刊が出ていたので読んでしまった。「QED 神器封殺」です。えーっと熊野の話が続くんですが。。。「QED~ventus~熊野の残照」とのつながりがあんまり明確に書かれていないんだけど、完全に続編だろと。しかも袋とじだし。。。さて、剣と鏡と勾玉を当てはめるとすると、スサノオ、イナダヒメ、ニギハヤヒの親子が適切ではないか?

まあ殺人事件だけはあんまり今回も深さはないなあ。。。話自体は私にはおもしろいんだけど、一般にみんなついていけるんだろうか?まあライトのベル的にはタタル君に輪をかけたような御名方登場!というわけでまた再登場しそうである。が、こういうのがけっこう好きなんだな。

January 21, 2006

●アレン警部登場

book-Marsh-02.jpgナイオ・マーシュの「ランプリイ家の殺人」がそれなりにおもしろかったので、論創社の「アレン警部登場」を読んだ。ナイオ・マーシュの処女作であるらしい。トリックというか推理小説としての柱は少し弱い気もするんだけど、やはり登場人物やアレンの冷たいあしらいが良いので、まずまずおもしろかった。推理小説としては星3つだけど、その通俗小説部分のうまさで+0.5で、3.5としたい。

今年も論創社から出るみたいだし、ハヤカワミステリで入手した「死の序曲」「ヴァルカン劇場の夜」も読まなきゃなあ。

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January 11, 2006

●ローリング邸の殺人

book-Scarlett-01.jpg論創社から出たロジャー・スカーレットの「ローリング邸の殺人」を読んでみた。ケイン警視が巻き込まれる冒頭から、館の中で出てくる怪しい面々の怪しい行動の数々がそそります。トリックは、ちょっと無理があるかなあと思ったけど、私はそういうのには甘いので気にしない。でも解説はちょっと自意識過剰だよなあ。作品としては星3.5ですが、3.5は十分及第だと思ってくんなまし。

論創社からの刊行予定では
ジョセフィン・テイ 『列の中の男』
G・K・チェスタトン 『マンアライヴ』
パトリック・クェンティン 『巡礼者パズル』
パトリック・クェンティン 『ラン・トゥー・デス』
ナイオ・マーシュ 『死と踊る従僕』
あたりで、今年は舞い踊る予定でっす。

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January 04, 2006

●神様ゲーム

book-maya-03.jpg「このミス2006」で良い感じだったので麻耶雄嵩の「神様ゲーム」を買おうと思ったのだが12月はけっこう品切れ、年末にやっと購入できました。造本が立派なこともあるんだけど、ちょっと高いかなーという気もする。で、内容はというと、いつもの麻耶雄嵩どおりダーク、というかひさびさに「夏と冬の奏鳴曲」以来の虚無感とでもいいましょうか、子供相手にやっていいのか?という感じです。推薦は・・・しにくいんだけど、個人の感想なので★4つということで。しかし年明けからこの本では暗い一年になりそうじゃのう。

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December 31, 2005

●最後の審判の巨匠

book-Perutz-01.jpgレオ・ペルッツの「最後の審判の巨匠」を読む。ミステリ的な紹介もあるけど、どちらかというと幻想小説(というか私の思う妄想小説)に近い。最後まで読むと評価は両方に分かれるんだろうなー、と思う。私は最後の最後も信用できないので、好評価です。つうか惚れました。なによりも表現の不安定さが美しい。というわけで星4つ。私的には4.5でもよいけど推薦するかというと、ちょっと考えちゃいます。逆にこの本を好きだという人とはいろいろ語り合いたくなったり。レオ・ペルッツはどこかで聞いた名前だなーと思っていたら、国書刊行会の幻想文学大系に「第三の魔弾」があるのね。早速購入です。

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December 30, 2005

●悪女パズル

book-Quentin-01.jpg「本ミス2006」のほうで上位になっていて、黄金期の作品らしいので買おうと思って、徘徊したがみつからず。うーん、やはり私のように「本ミス2006」などみて買おうと思った人も多いのかな。というわけで大雪の金沢で妹に書店まで運転させて発見。大桑の「Imagine」はなかなか品揃えが良いね(超ローカルネタ)。

さて、パトリック・クェンティンの「悪女パズル」ですが、いやまずまず面白かった。私は途中でしかけがわかっちゃた(すなわち犯人も)んだけど、それでも小技がいろいろあって、「ほう」という感じで楽しめました。星3.5ということでで。

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December 18, 2005

●このミス2006+本格ミス2006

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近年あんまり買わなかったんだけど、何年ぶりかで「このミステリーがすごい!」「本格ミステリ・ベスト10 (2006)」を購入した。ここ数年は私の思うミステリは全然載っていなかったのっで遠ざかっていたんだけど、最近出た黄金期の海外ミステリを結構買っているので購入してみた。邦人の作品はあんまり読んでいないし興味ないんだけど、麻耶雄嵩の「神様ゲーム」はなかなか評判良さそうなので買おうかなと思ったんだが、売り切れでどこにもないなあ。。。海外ものではイネスなどの話が載っていてよかった。バカミスで紹介されていたが認める。ウッドハウスもね。レオ・ブルースの「骨と髪」も評判よさそうなので、これは調達。クェンティンの「悪女パズル」も見当たらなかったなあ。

来年は昌文社からイネス、ミッチェルあたりがでるらしいので覚えておこう。また国書刊行会は短編の新シリーズがはじまるらしくビオイ=カサーレスやカルヴィーノの名前がでていたので、出版されたら小躍りしよう。

池袋のジュンク堂では萩尾望都のラララ書店を開いているが、選択はなかなかおもしろい。でも奥泉光が入っていないのはもったいないなあと思った。

December 07, 2005

●死が二人をわかつまで

book-Carr-01.jpgbook-Carr-02.jpg

日々是読書録では私の積んである本を載せているんだけど、ミステリは作っていない。。。というのは読んだけど今持っていないクリスティーとかクイーンとかどうするかなーとか考えていたら面倒になっちゃったんだけど、もともとの目的が自分の持っている本を管理して重複買いしないという意味からは作らんといかんなー。というのはJ.D.カーの「死が二人をわかつまで」で、二冊買ってしまった、というか文庫本買っていたのに忘れて、国書刊行会の単行本買っちゃったんですけど。うーん、書棚に世界探偵小説全集を全部並べる気はないんだけどなあ。。。というわけで、ちょっと失敗。

で、「死が二人をわかつまで」なんだけど、トリックもプロットも良いのだが、私の好みからすると今ひとつ足りない。このあたりが私がカーマニアになりきれないところなんだなあ。ちょっと映画的というよりは2時間TV的で、皮肉というよりはどたばたという感じ(今回はどたばたじゃないんだけど)が微妙に違う。。。カーの中では好きかもしれないということで星3.5でいかがでしょう。

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December 03, 2005

●ランプリイ家の殺人

book-Marsh-01.jpgええっと推理小説の古典を集中して読んでおります。ナイオ・マーシュはセイヤーズ、クリスティ、アリンガムと並んで「英国ミステリ4大女流作家」の一人となっておりますが、私読んだことありませんでした。不勉強のきわみでございます。さて、最近論創社からもいくつかでているので、「男前のアレン警部」も読んでみようかということで、「ランプリイ家の殺人」を読みました。国書刊行会のシリーズはレベルが安定しているので。で、「ランプリイ家の殺人」だけど、ランプリイ家が面白すぎる。時間関係の細かい部分はわたくし好みではないのですが、ランプリイ家とアレン警部で楽しく読めたので星4つ。

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November 30, 2005

●歌う砂―グラント警部最後の事件

book-Tey-01.jpgジョゼフィン・テイというと「時の娘」をずいぶん昔に読んでもちろん面白かったんだけど、あんまりグラント警部に思い入れもなければ、文章や情景の描写にも気づかなかった。。。というのはほとんど病室の中のわけで。でも看護婦とかの人物の使い分けはうまかったような印象がある。で、論創社の「歌う砂―グラント警部最後の事件」を読んだらこれがおもしろくておもしろくてたまらん。もっともパズラーではなく、前半部分はもう事件的にはなんにもないままにグラント警部再生物語なんだけど、それがおもしろい。

乱歩が読みたがったということなんだけど、あんまりトリックや事件の不思議さで追っかける本ではないだけに、読んでそう思ったか知りたいなあ。というわけで星4つ(4.5でも良いけど推理小説としては物足りない人がいるかもしれないので)。

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November 26, 2005

●大聖堂は大騒ぎ

book-Crispin-02.jpg「愛は血を流して横たわる」が面白かったので、続けてエドマンド・クリスピンの「大聖堂は大騒ぎ」を読んだ。おもしろかった。もっとも好き嫌いは別れるかもしれません。推理小説としての完成度は・・・壊れているかもしれないし、トリックは・・・これも壊れているかもしれん。でもジャーヴァス・フェン教授が活躍、というか引っ掻き回しているだけのようにもみえてしまうのだが、がんばってくれればそれでいいのだ。星4つといきたいところだが、その次に読んだジョゼンフィン・テイの「歌う砂」のほうがうまさに感心したので、星3.5で。

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November 13, 2005

●暗闇神事 猿神の舞い

book-Suzaku-03.jpg藤木稟の朱雀十五シリーズの新作が出ていたので読みました。「暗闇神事 猿神の舞い」でのうんちくは歌舞伎。歌舞伎の一門である猿田屋に伝わる「ミハシラツキ」の伝説と浅草連続猟奇殺人事件の話です。前作の「夢魔の棲まう処」はいまひとつぴんとこなかったし、「殉教者は月に舞う」はあまりにもひどかったけど、今回はまずおもしろかった。

やはり歌舞伎とか猿楽とかでうまく埋められているからで、その饒舌な感じがないとすかすかになっちゃうんだなーと思った。朱雀十五が出てくるバランスも良いような気がする。出過ぎることも難しいし、あまり出ないとおもしろくないし、、、難しいですなあ。人魚もでてきて某巨大作品と似ているような。。。でもこちらのほうが断然面白いと思う。柏木くんはこのくらいでうろうろしているのがよく、前回作だとちょっと壊れすぎ。

ただ、トリックは許すにしても、これだと犯人が猿田屋内の人間になってしまうので、心理的にはちょっと疑問だ。あと本のデザインはあんまり気に入らないぞ。

November 07, 2005

●アプルビイの事件簿

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マイケル・イネスのものでは大物の「ストップ・プレス」が積まれているんだけど、途中で止まっていた創元推理文庫の短編集「アプルビイの事件簿」をもう一回最初から読み直した。けっこうしっかりした短編集だなと3.5点。ついでに森一訳 勉誠社の「アップルビィ警部の事件簿」も読みました。勉誠社の「アップルビィ警部の事件簿」のほうは訳の問題もあり星3つ。でもイネス・ファンは読むように。

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October 28, 2005

●愛は血を流して横たわる

book-Crispin-01.jpgエドマンド・クリスピンはポスト黄金時代ということで、最近イネスとかの英国面白派が好きなので気になっていたんだけど、とりあえず国書刊行会の「愛は血を流して横たわる」。えっと、どろどろの恋愛悲劇のようなタイトルですが、全然そういうことはございませぬ。ジャーヴァス・フェン教授による学園モノとでもいいましょうか、ちょっとシニカルで、けっこうどたばたな感じが楽しゅうございました。というかクリスピンおもしろいじゃん!ということで、今回も星★4つ!なんか最近激甘採点です。で、クリスピンは他のものも読もうと思うぞ。

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October 21, 2005

●カリブ諸島の手がかり

book-stribling-01.jpg国書刊行会の世界探偵小説全集からT.S.ストリブリングの「カリブ諸島の手がかり」を読んだ。Clues of the Caribbees という題なのだが、Cruise of the Caribbees(カリブ諸島の船旅)とかけてるのかしらんなどと思いつつ、われながらナボコフ病だなあと。まあそんなのはおいておいて、カリブ諸島を背景にしたアメリカ人であるポジオリ教授が探偵として事件に当たる短編集なのですが、全然名探偵ではないポジオリ教授がおもしろすぎる。いや、もっというと探偵小説ですらないわけですが。最後はやはり強烈なので、お奨めしておきたい。右のリンクで「時系列の読書録」で、個人的な採点をしているわけですが、これは★4つ(5点満点)としておきましょう。

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October 08, 2005

●アプルビイズ・エンド

book-Innes-02.jpg論創社という出版社はあんまり知らなかったんだけど、黄金期などの日本では知られていないような推理小説を翻訳してくれているらしい。9月末にはマイケル・イネスの「アプルビイズ・エンド」がでたので、うほうほと踊りながら購入したのです。なお、10月初頭には手をひらひらさせながら国書刊行会のほうの「ストッププレス」も購入した。「アプルビイズ・エンド」はいってみりゃバカミスのはしりみたいな気もするけどハイブロウなテンションの会話や表現は一行毎におもしろい。もうなんつうか遊びのわかったひねくれもののための本というか、うっきゃーという感じです。他の作家の本も買いますで、ぜひ論創社には他のイネスの本も翻訳していただきたく。

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September 20, 2005

●迷路

book-MacDonald-02.jpgフィリップ・マクドナルドは「フライアーズ・バードン館の謎」でちょっとひいていたんだけど、世界探偵小説全集を読み始めるとすると「Xに対する逮捕状」があるので読むのか?ゲスリン大佐おもしろいのか?ということで、ちょっと予備的にポケミスの「迷路」を読んでみたら、より一層どんびき状態になってしまった。いや正統パズラーの本で、休暇中のゲスリン大佐(読者)に与えられるのは、検死審問の資料のみ。さああなたは犯人を見つけられるか?いや見つけても全然面白くないんですけど。。。こういうのが本格の醍醐味なんだろうか?

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September 13, 2005

●モーダルな事象 -桑潟幸一助教授のスタイリッシュな生活-

book-Okuizumi-02.jpg一面のモーダルである。

奥泉光の「モーダルな事象」は文藝春秋の本格ミステリ・マスターズの一冊として書かれており、しかし私としては山田正紀の「僧正の積木唄」でこのシリーズにはトラウマを覚えており、では一般の人はどうかというとそうでもないふうなので、ああ世の中にはいろいろあるのだなあ、俺には本格ミステリ・マスターズは過ぎたるものだったのだ、世間の人もそういっているのだ、お前なんかに本格を読む資格はない、ミステリを論じる能力もない、マスターズなどもってのほか、ああ資格はないのです。

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August 21, 2005

●QED -ventus- 熊野の残照

book-QED-04.jpgいつのまにか高田崇史の「QED~ventus~熊野の残照」がでていた。悩みつつも購入して読んじゃった。ventusってラテン語で「風」とか。前にも書いたとおり、もう事件と過去を無理やり結びつけるのはいいよってかんじだったので、このくらいがちょうど良かった。内容は熊野詣ですが、その回る順序や熊野という土地にまつわる「意味」を考えさせてくれます。推理小説風な部分は、まあご愛嬌と言うことでこのくらいがちょうど良い気がする。タタルくんが事件にまでがんばる意味はないんだし。

【追加】ちょっと夫須美神追加。

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August 16, 2005

●空のオベリスト

book-DalyKing-02.jpg帰省中に C.デイリー キングの「空のオベリスト」を読んだ。こちらはロード警部シリーズの第3弾らしいが、2作目である「鉄路のオベリスト」が手に入りそうにない。。。こちらは前回の豪華客船とは一転、航空旅客機を用いた事件で、クリスティの「大空をつかむ死」なんかを思い出すね。また形式もこっていて、エピローグからはじまり、最後のプロローグで締めるあたり凝っているノウ。前回のようにうじゃうじゃと心理学者もでてこないのでよかった。ちょっと納得いかない部分もあるけど、全体的にはおもしろかったといえよう。細かいことはタイトルも含め、「読後に」欄でしか書けんしなあ。

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August 09, 2005

●第四の扉

book-Halter-01.jpg音楽も作らずに、忙しいのう、書くことないのう、とか考えているうちに購入していたCDやDVDがけっこう溜まってしまった。ま、順番にいきましょう。所詮タイムリーな紹介はしていないわけで。で、ポール・アルテの「第四の扉」を読んだ。ハヤカワポケミスです。推理小説です。本家を超えた「フランスのディクスン・カー」です。個人的好みとしてはひっかかるものがあるが、まずまずおもしろかったし、推理小説としては良くできているんだろう。その引っかかる部分が、私が推理小説専門になれない理由でもある。

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July 14, 2005

●月が昇るとき

book-Mitchell-02.jpgグラディス・ミッチェルの「ソルトマーシュの殺人」が気に入ったので、勢いで晶文社からでている「月が昇るとき」も読んだ。こちらは13才の少年の視線(書いているのはもっと後の設定らしい)で書かれた連続殺人事件というか切り裂き魔の話なんだけど、妙に少年たちがよく、萩尾望都の「ギムナジウム」などを思い出させるような世界である。とはいえ、もっと下層階級なんだと思うけど。

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July 10, 2005

●ソルトマーシュの殺人

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国書刊行会の世界探偵小説全集はアントニー・バークリーが読みたくて買い始めたんだけど、最近は他の作家にはまっている。英国ファルス派というか英国新本格派のマイケル・イネスもおもしろかったし、マケイブもけっこういい線いっていた。デイリー・キングは「海のオベリスト」を先にしてしまったのだが、「空のオベリスト」も準備済み。。。なんだけど、次は英国ファルス派にはいるらしいグラディス・ミッチェルの「ソルトマーシュの殺人」を読んだ。これ大好き。マープルものをぐちゃぐちゃにして歪ませて皮肉たっぷりにするとこうなるのかな。

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June 27, 2005

●海のオベリスト

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C.デイリー キングは本格読者への挑戦派であるらしい。「空のオベリスト」を購入したので、それを・・・と考えていたが、どうせ読むなら前のものから読んだほうが良いよねー、と考えて「海のオベリスト」から読んだ。感想は・・・というとまあ面白いといえば面白いが微妙だ。英国的な皮肉さがないところがちょっと。巻末に「手がかり索引」があったりするんだけど、綾辻の「暗黒館」もこれでいけばいいのにと思った。

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June 06, 2005

●編集室の床に落ちた顔

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前回の「ハムレット復讐せよ」がおもしろかったので、続いて国書刊行会の世界探偵小説全集から。キャメロン・マケイブの「編集室の床に落ちた顔」を読んだ。「ハムレット復讐せよ」が正統的な推理小説の極みだとすると「編集室の床に落ちた顔」は変格的な推理小説の極みとも言える。だいたい同じころに出ているのがおもしろいし、当時の推理小説層の厚みを感じさせる。で、おもしろかったかと言えばすんごくおもしろかったんだけど、人に推薦するかといえば、うーん、できない。あまりに好みを選びそうなのである。しかし22歳で書いたのかよ。。。

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May 28, 2005

●ハムレット復讐せよ

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マイケル(マイクル)・イネスの「ハムレット復讐せよ」をずいぶんとかかってやっと読み終わった。いや、しかしこれはおもしろいし、最近読んだ推理小説ではもっとも「うーん、おれの求めていた本格ってこれなんだよこれ!」って感じでした。やはり良い!スカムナム館のゴチックな異界としての世界もいいし、「ハムレット」劇の中での殺人という構成も良い。悪意というか知性と悪戯心とユーモアと自尊心で自滅する犯人はすばらしい。そんな犯人こそが事件を華麗に演出し、推理小説を本格にするのであります(やはり「偶然」はあかんよ)。人によって評価はそれぞれだけど、僕には推理小説という分野の大傑作だと思う。ということは私の中で「本格」というジャンルは他の人とちがうのかもしれん。「人それぞれに本格あり」。最近のライトノベルを本格と思っている人は読まないほうが吉。

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May 05, 2005

●フライアーズ・パードン館の謎

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推理小説は黄金期のものが良いなあといいながら、あんまり読んでませんでした、すみません。フィリップ・マクドナルドとロス・マクドナルドも一部思い違いしてました。さて、原書房のヴィンテージ・ミステリのシリーズの「フライアーズ・パードン館の謎フィリップ・マクドナルドを読了。クリスティとかに慣れていると犯人はある程度すぐわかっちゃうんだけど、その雰囲気と構成を楽しんだ。ただちょっと設定と登場人物は類型的で弱いかもしれんなー。他にも探偵の件でちょっと不満はあるんだけどそれは以下で。また、愉しんだのは良いがハードカバーは値段もかかるし場所もとるというのが欠点じゃな。でも藤木稟の「殉教者は・・・」よりはおもしろいぞ。

そうそう、中の記述で「ウッドハウスに出てくるみたいな若者」とか「ウッドハウスのジーヴスのような」といった表現があって、「比類なきジーヴス」先読んでおいてよかったよーって感じ。この時期の他の本にも出ているとかいうので、やはりウッドハウスはみんな読んでいたんだなあ、と本作とは関係ないところで感心した。

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May 04, 2005

●殉教者は月に舞う

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藤木稟の「殉教者は月に舞う」を読んだが、設定が現代?で、登場人物が朱雀十八、十夜、柏木さくらとかつてのシリーズの曾孫世代のようである。朱雀十五のシリーズは大正浪漫的な怪しさが好きだったわけで、こうなるとなんかすかすかな感じ。もちろん推理小説・・・と言い切るには怪しい気もするので、最近流行のキャラによるライトノベルなんだろうけど、私にとってはそれほどキャラが立っているとも思えないので、ちょっとなあという感じでした。続けて読むかは疑問。

メイントリックは、うーんという感じだしじゃあ最初の殺人頼んだとの結果は偶然?あたりが気に入らない。宗教団体がメインになるのかと期待したのに。。。設定は森博嗣の某作品を思い出したが、どちらもそんなに好きなわけではない。

March 09, 2005

●新・世界の七不思議

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他にいくつか並列に本を読んでいるんですが、期末ということもあってなかなか忙しいです。書店をみたら、鯨統一郎の「新・世界の七不思議 」が出ていたので買って読んだ。デビュー作の「邪馬台国はどこですか?」が息抜きにはおもしろかったので、その続編である今回も、という感じ。1日ですぐ読み終わっちゃったんだけど、私自身別に深いものを要求していたのではないので、これくらいでよいのかもしれん。

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March 05, 2005

●オペラ座の怪人

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というわけで、ガストン・ルルーの「オペラ座の怪人」をハヤカワミステリ文庫版で読んだ。うーん、やはり小説だと設定が少々違っていたり、兄のフィリップ伯爵がでてきたり、謎のペルシャ人がでてきたり、最後は脅威の拷問の間があったりで、やはり都会のゴチック小説なんだなあと納得した。怪人とクリスティーヌの関係も納得だよ。もちろんミュージカル版はミュージカルの世界があるわけで、うまく見せ場をつくっているなあと逆に感心した。ラウル君はどっちでもやっぱり何にもできずにへたれっぽかった。

他にも創元推理文庫、角川文庫で出ているようだが、ハヤカワミステリ文庫版は日影丈吉氏の翻訳が古典的なので、雰囲気は好きなのだが、わかりやすいかというとちと疑問もあり、これはお好みで選んでもらったほうが良い。

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February 21, 2005

●プリーストリー氏の問題

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「シシリーは消えた」に続いて、バークリーの作品を読んでいる。といってもバークリー名義ではないのですが。A.B.コックスの「プリーストリー氏の問題」です。A.B.コックスはアントニー・バークリーの本名のはず。いくつか小説もあるようで、「シシリーは消えた」も最初はA.B.コックス名義で新聞連載されたとか。

で、「シシリーは消えた」はまだ推理小説の範疇なんだけど、「プリーストリー氏の問題」はもはや推理小説ではなくスラップスティックみたいな感じなんだけど、でも推理小説を思い切りパロディ化しているから、やはり読者層は似たところなんだろうなあと思う。で、こちらも大変面白かった。最近のように殺伐としていないのがよい。

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February 18, 2005

●シシリーは消えた

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アントニイ・バークリーを読むのは楽しい。構成も出てくる人間も会話もひとひねりある感じが好きだー。そうはいってもまだ「ロジャー・シェリンガムとヴェインの謎」や「絹靴下殺人事件」が積ん読状態のところで、「シシリーは消えた」とA.B.コックス名義の「プリーストリー氏の問題」の2冊追加。うーん、溜まっていくねえ、、、しかも全部ハードカバーだし。とりあえず幻だった「シシリーは消えた」から読んだけど、いつものバークリーで楽しかった。こういうのが好きだなあ。

読書録のほうには推理小説は入れてないんで、まあその場限りの記録ということで。私はバークリーでは「最上階の殺人」「ジャンピング・ジェニィ」といった壊れた作品が好きなので、推理小説をパズル要素のみでは全く読んでいないこと前提の評価になります。

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February 17, 2005

●二人の天魔王―「信長」の真実

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読んでいる途中の本を持ってき忘れたので、帰り道に手軽な文庫を買って読み始めたのだが、けっこう面白かったので夜に最後まで読んでしまった。それは明石散人の「二人の天魔王―「信長」の真実」という本で、信長は現在人気があるほどの独創的でもなく、まあ普通の戦国武将だったという話なんだけど、それなりに納得したり。

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January 19, 2005

●QED 鬼の城伝説

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前の「QED ~ventus~ 鎌倉の闇」が事件部分があまりにひどかったので、危険だなーと思いつつ、やはり新刊が出たので買ってしまったのです。で、今読んでる重いやつをちょっと止めて、高田崇史の「QED 鬼の城伝説」を読了。いや今回のは事件も謎も薀蓄も良いバランスだなあと思いました。

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December 12, 2004

●顔

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というわけで、急に読みたくなって、エラリー・クイーンの「」を読んだ。これで、33/39クイーン。 「顔」は後期の作品で、華麗な展開はないのだが、けっこう渋い。このなんともいたたまれない後味が好きだ。推理小説としては途中でわかっちゃうので、評価低い人も多いと思うんだけど、後期のクリスティーと同様に、読後に噛み締めると味が出るタイプなのだと思う。

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December 11, 2004

●エラリー・クイーン Perfect Guide

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街は12月、書店で「このミス2005」を発見しぱらぱら見たのだが、どうも興味なし。最近では本格っぽい感じもあるが、ちょっとミステリという言葉にかかるイメージに違いがあるのだなあ。エリザベス・ボウエンの短編集を読んでいて、これも「ミステリ短編集」と副題がついているが、ミステリってどいう意味?って感じです。

さて、「このミス」はあわないので、目に付いた「エラリー・クイーン Perfect Guide」を購入。いやあこれは楽しいなあ。やはりクイーンが好きだ。昔はクリスティが好きでクイーンはちょっと、という感じだったのだが、国名シリーズなどしか知らなかったせいでもある。私は中後期の作品が好きなのだわ。読んだ長編数を数えてみると、32/39クイーン。 しかも国名シリーズまだ3作も読んでないし。ここまでくると意地でも全部読んでしかも忘れているやつを読み返すさ。

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October 10, 2004

●生首に聞いてみろ

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法月綸太郎の「生首に聞いてみろ」を読んだ。各副題がキング・クリムゾンということで、聴きなおしてから心して読んだのであるが、まずまず面白いといったところ。最初は退屈だったが、途中から面白くはなった。面白くはなったが、しかし・・・というのはあるのです。私の思う本格ものの本質的なところで、引っかかる部分があるんですわ。法月のものは中篇では最高だと思うのだが、長編ではしっくりいかないのもそのあたりかと。ところで久保寺容子ってなんだっけ?すでに記憶なし。

以下ネタバレっぽいのを含みます。(このBlogの読者が減りますなあ)

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September 19, 2004

●螢

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麻耶雄嵩の「」を読んだ。なんだかこちらのほうが正当な館モノになっているし、謎のバランス、最後の驚かし具合、一番最後の悪意といい久々に満喫しました。うーん「名探偵木更津悠也」もよかったし、今年はどうなってしまったんだ。これで十年ほど沈んじゃうのはやーよ。

「暗黒館」ではけっこうぼろくそだったのですが、わたしは麻耶雄嵩には甘い。甘いんだけど、それを割り引いてもすごくうまくまとまっているんじゃないでしょうか?いつもは E 難度を狙うけど、今回は D 難度を 2 連発で着地の形にこだわってみました、というところでしょうか?いつもの積み上げた世界観の崩壊はないにしても、これこそ悪意という世界はなかなかよかったす。またトリックがわかった後で読み直すとそれぞれの愛の形がすべて歪なものに変化してしまうのが美しい。「館」もの引き取ってください。

あ、でも「こめかみ使用禁止」には追加。この隠し通路は許す。

以下ネタばれ含みます。

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September 17, 2004

●暗黒館の殺人(下)

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というわけで、読了。後半以降は1ページ4~5行しか読まず、それでも自分的には読了だ。つうか、本当に「本格」と「幻想小説」に対する感覚が全く違うなあと感動的であった。私にとっては綾辻の喜んでいるトリックはどーでもよくて(だいたいわかっちゃうけど)、蒼白の霧とかなんとかいいながら、全部もろだししちゃうと幻想小説になんないのに。。。まあこれで本当に「館」シリーズともお別れできてうれしい。

なおきの八戒

頼むから偶然はせいぜい1個にしてくれ・・・綾辻行人、山田正紀
頼むから密室はもう使わないでくれ・・・森博嗣、有栖川有栖
頼むから隠し通路はもう使わないでくれ・・・綾辻行人
頼むから一人称はもう使わないでくれ・・・綾辻行人
視点使用禁止・・・綾辻行人
悪意使用禁止・・・綾辻行人
記憶喪失禁止・・・綾辻行人
こめかみ使用禁止・・・綾辻行人
以下そのうち続く(と十戒までいくかもしれない)

以下ネタバレ含みます。

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September 15, 2004

●「暗黒館の殺人」(上)

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うーむ、カルペンティエールの「バロック協奏曲」でリハビリしてから、バルガス=リョサの「フリアとシナリオライター」へいくつもりだったのだが、綾辻行人の「暗黒館の殺人」(上)(下)がでていたので、そちらにころぶ。ついでに麻耶雄嵩も単行本出してるし。1年に一冊以下だと思っていたので甘く見ました。ほほほ。

いや、綾辻行人の作品に関しては、もう全く信用していないのですけど、黒猫館放り投げたんですけど、まあ館シリーズだけは最初から読んでいるからここまでは読むか。。。これできっと「暗黒館の殺人」も放り投げて、2chふうに綾辻逝人と改名してくれ、って世界の中心で叫ぶんだろうなあ。。。で、まずは上巻。

だいたい長いしだるいし館のイメージなんかわかんし、みんな記憶喪失してるし、勘弁してくれよ状態です。本格というものは雰囲気だって、違うんですよね。描写や文章の使い方ももうとても勘弁してもらいたい。まったく半分から四分の一でよいと思いますです。他のサイトの感想見て、これですばらしいと思える人は幸せだなあとつくづく羨ましいと思ったものである。もう少し良質のゴシックミステリを読んで欲しいね。もろだしで怖がれーって言われてもねえ。もろだしならクライブ・パーカーまでいかないと。。。

さて、私も大人であるから綾辻の描写なんぞに期待はしていないが、下巻で本当に驚くことができるのであろうか?それだけが一縷の期待だよ。。。

August 13, 2004

●キマイラの新しい城

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この木金は夏期休暇として寝てすごすのです。殊能将之の「キマイラの新しい城」を読んだ。おいおい大丈夫カーという設定でしたが、思ったより楽しめました。しかし、楽しめる人はどんどん減っていくんじゃないかと他人事ながら心配。「美濃牛」読んでいないと石動戯作はただのアホですし、「黒い仏」読んでいないとアントニオさんのことがわかんないし、「鏡の中は日曜日」を読んでいないとアノ人のことは訳わかんないだろうし。。。「樒・榁」は読まないほうが。。。

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August 10, 2004

●QED ~ventus~ 鎌倉の闇

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どうも、あまり自己満足にすぎる Blog は嫌いなので、なんらかの情報を人に読んでもらうことを意識した形で書きたいと思っている。もちろんその中の自分の意見に関しては自己満足的かもしれないが、書き方としては読んでもらうことをある程度前提にして書いているつもり。そうすると、イラクの戦争や誘拐の話や最近の事件、株・商品相場など、まだ自分でどのレベルで書いてよいのかわからず、新製品への興味もこの夏はあんまりなくて、必然的に音楽と小説のことばかり書いている。ある意味一番無味乾燥というか誰にも毒のない話ですね。そのうちもう少し芸風を増やしたいが、今回も小説の話です。高田崇史の「QED ~ventus~ 鎌倉の闇」について。

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August 06, 2004

●夢魔の棲まう処

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藤木稟の「夢魔の棲まう処」を読んだ。これは盲目の探偵?朱雀十五シリーズの最新刊であるのです。朱雀十五シリーズは京極夏彦後の新伝奇ミステリ系の中ではよくできているほうだと思っていました。朱雀くんのいやみな感じが好きだったのです。。。が、前作の「上海幻夜」は朱雀くん5歳ということで買う気にならず、「大年神が彷徨う島」が2000年出版で4年経っていると、すでに登場人物の設定をすべて忘れています。今回は昔の設定に依存しているところがあるので、大いに困った。

昭和初期の雰囲気はよくでてるし、朱雀も好きなんだけどな。

July 26, 2004

●花の旅・夜の旅

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マーク・ヘルプリンの「ウィンター・テイルズ」を読んでいるのだが、ベッドサイドにずいぶんころがっていた皆川博子の「花の旅・夜の旅」をちらと見たらおもしろくなって再読。というかもともと「聖女の島」のほうを読みたくて買ったはずなのだが、「花の旅・夜の旅」のほうだけ読んで積まれていたらしい。この際両方読んだ。うーん、濃い。

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July 23, 2004

●百鬼徒然袋-風

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風、というか風邪をひきました。3連休の最後は暑いし風邪だし、だらだらと京極夏彦の「百鬼徒然袋-風」を読みました。薔薇十字探偵・榎木津礼二郎の話です。本体のシリーズがいまひとつ拡散気味のせいで、こちらのほうがおもしろく感じています。

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July 09, 2004

●ほんやく本のススメ

最近忙しくて読書記録をだしてないのですが、そろそろ一冊読み終わるかなーと思っています。で、すみ&にえさんの「ほんやく本のススメ」サイト の読書量を見るとただただ羨ましく候。いや、忙しいと言いながらパチスロやっていたりというのもあるのですけどね。暑いし。で、上記サイトで上半期のベストを書いてみました。Blog からの抜粋なので、私の部分は新規に読まれる必要はないかもしれませんが、他の人のは参考になりますね。

で、そこには書けなかったのですが、ちょっと無謀な私の下半期積んである読みたいものリスト。

バルガス・リョサ 「フリアとシナリオライター」
スティーブン・エリクソン 「真夜中に海がやってきた」
ウラディミール・ナボコフ 「ロリータ」「セバスチャンナイトの真実の生涯」
リチャード・パワーズ 「舞踏会に向かう三人の農夫」「ガラティア2.2」
クリストファー・プリースト 「奇術師」
マーク・ヘルプリン 「ウィンター・テイルズ」
ジョン・クロウリー 「リトル・ビッグ」

さすがに「世界終末戦争」とか「サバティカル」、「アーダ」とかは無理だろうなー。いや、上に上げたものも実質は無理だろう。半分も読めればよいほうですか。その他に推理小説系があって、けっこう黄金時代のものを読みたくてバークリーの2編、ミルンの「四日間の不思議」、イネスの「ハムレット復讐せよ」などいろいろ読みたいが、とほほ。

しかし朱雀十五シリーズの新刊と京極夏彦の榎津探偵シリーズ新刊を買ってしまったので、やはりそちらが先になるのであろうと思われ。

June 13, 2004

●赤毛のレドメイン家

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ヴァインランドにやられているうちに、古典的な本格推理物が読みたくなったので、フィルポッツの「赤毛のレドメイン家」を読んだ、というか20数年ぶりに再読です。イギリスで始まる殺人事件は、コモ湖畔でクライマックスにいたります。マンドリン関係でミケーリファンの人はコモで亡くなったミケーリを想い、BGMはミケーリの曲にしましょう。。。しかしどちらかというとボッタキアリでどろどろ?って感じだな。

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May 23, 2004

●名探偵木更津悠也

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麻耶雄嵩の新刊の「名探偵木更津悠也」を読んだ。最初からひどい(これは誉め言葉です、ものすごく気に入っています)。カバーの裏から香月実朝の名探偵木更津悠也をたたえる言葉なのである。どこが破壊的かというと・・・「翼ある闇」から読んでいる必要があるのだが。以下少々ネタばれっぽいのを含みます。

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March 28, 2004

●ジャンピング・ジェニイ

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アントニイ・バークリー(Anthony Berkeley)の「ジャンピング・ジェニイ」を読む。というか、少し前に読み終わったのですが。バークリーは1920~30年代の推理小説の黄金期の作家の一人ですが、作品の邦訳は非常に少なかったのです。しかし、最近国書刊行会や晶文社から翻訳されたので、全体像を知ることができるようになりました。「ジャンピング・ジェニイ」は時期的には後期といっても良いのでしょうが、すでに推理小説としては「壊れた」作品です。

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February 16, 2004

●ドン・イシドロ・パロディ 六つの難事件

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ホルヘ・ルイス ボルヘス (Jorge Luis Borges), アドルフォ ビオイ=カサーレス (Adolfo Bioy Casares)による「ドン・イシドロ・パロディ 六つの難事件」を読んだ。最初は語り口も含めて楽しく読んでいたのだが、最後のほうは飽きたっす。

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January 15, 2004

●QED 竜馬暗殺

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高田崇史のQEDシリーズは惰性で読みつづけている。今回は幕末の竜馬暗殺の黒幕は誰かという話と暴風雨で孤立した高知の山中の村での殺人事件です。感想は・・・

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September 16, 2003

●陰摩羅鬼の瑕

久しぶりに京極夏彦の京極堂シリーズの新刊がでました。今回はあまりにストレート。ちょっとだけ内容にもふれるかも。

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September 08, 2003

●不連続殺人事件

この十年間に何度かの挫折を超えて、坂口安吾の「不連続殺人事件」をやっと読み終えました。連載中に読者に挑戦したことで有名です。最近は本当に読みたい推理小説が少なくて、過去に目が向くことになります。

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